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IT投資減の企業こそ、クラウドの新規提案先になる!

IT投資減の企業こそ、クラウドの新規提案先になる!

2017年07月25日更新

IT投資減の企業がクラウドの新規提案先へ
企業に踏み込んだ提案が収益につながる

「クラウドを提案すると収益が下がるため、商材として取り扱いにくい」という販売店からの意見はよく耳にする。しかし、本当に収益は下がるのだろうか。ノークリサーチの調査によれば、クラウド関連商材の提案が収益に寄与している割合は2割弱と、以前と比較して決して少ない数値ではなくなっている。調査を実施したノークリサーチに話を伺い、調査から見える今後のクラウドビジネスの展望に迫った。

Lesson 1 クラウドで収益を獲得している販売店/SIerは2割弱

中堅・中小企業のIT市場を中心としたリサーチ・コンサルティングを手がけるノークリサーチが、5月8日に「2017年 販社/SIerのクラウド拡販に向けた取り組み実態に関する調査」を発表した。調査結果の中では、クラウド関連商材(SaaS)の提案/販売が収益に寄与している販売店やSIerの割合は2割弱に達しているという数値が示された。

この割合について、調査を担当したノークリサーチ シニアアナリストの岩上由高氏に話を伺うと「調査の対象となっているのは年商500億円未満の中堅中小企業です。メディアなどでよく話題となっているクラウドを取り扱っている大手の販売店は、もともとオンプレミス製品の提案で大きな利益を出していたため、クラウドを取り扱うと収益が下がるという感覚が強く、そうした声がメディアに反映されています。半面中堅中小の販売店は、オンプレミスでは扱えなかった新しいビジネスをクラウドでスタートできるため、収益に寄与できる効果が大きいのだと分析しています」と語る。

例えば従来、テレビ会議システムを提案する場合は初期投資が大きく、中堅中小の販売店では取り扱いにくいケースがあった。しかしクラウドのSaaSであれば初期投資も小さくWeb会議システムをスタートでき、ユーザー企業の拠点間でのコミュニケーションが円滑に行えるようになる。そのWeb会議システムをドアノック商材として活用しつつ、利用が進めば基幹システムの改善提案などを行うことで、2割弱となる16.4%の販売店が、クラウド関連の商材で収益を増やしているのだ。

Lesson 2 クラウドとオンプレミスの適材適所提案が重要

16.4%がクラウド関連商材が収益に寄与している半面、実に54.5%が「現時点では判断できない」と回答し、20%が「提案/販売の予定はない」と回答している。

この割合については「判断できないという54.5%の割合は決して悪い数値ではありません。まだオンプレミスの商材を提案して運用管理を行ったり、システム開発をしたりというビジネスは変わらずにありますし、そこにクラウドが参入したことで起こる変化を長期的な視点で判断するという姿勢は自然な過渡期の状況であると思います。また提案/販売の予定がない20%の中には、機密情報を扱っており外にデータを出したくないと考える企業を相手にビジネスを行っている販売店もあるでしょう。オンプレミスとクラウドの提案というと対立軸の話に陥りがちですが、双方適材適所で提案をすればよいと考えています」と岩上氏は語る。

それでは、実際にユーザー企業のクラウドの活用割合はどうなっているのだろうか。年商500億円未満の販売店やSIerに対して実施した「主要な顧客企業におけるクラウド(SaaS)活用状況と今後の予想」の調査では、「(ユーザー企業が)すでに活用しており、今後も活用の幅を広げる」が23.6%、「すでに活用しているが、現状を維持する」が7.3%と、販売店やSIer側は主要な顧客企業の23.6%がすでにSaaSを活用していると認識している。しかし、ユーザー企業側に対して「クラウド(SaaS)の活用状況」を尋ねた調査では「すでに利用中」が12.6%に留まっており、双方の数値に差が生じている。

Lesson 3 IT投資を抑えたい企業にクラウド提案の商機がある!?

前述のような11ポイントの数値の相違はなぜ起こるのか。岩上氏は「ユーザー企業におけるクラウド活用状況とIT投資意向の関係に要因があると考えています」と指摘する。

同社の調査によると「今後のIT投資増減別にみたクラウド(SaaS)の活用割合」では、「今後IT投資を増やす」が18.7%、「現状維持」が10.7%、「今後IT投資を減らす」が14.6%。ここで着目するべきは現状維持と回答した割合よりも、IT投資を減らすと回答した割合が上回っている点だ。IT投資を減少させる企業はコスト削減を目的にクラウド利用を選択するケースが多く、その動きが数値に反映されている。

販売店やSIerからは、このIT投資を増加させている企業は「IT投資が活発な既存顧客」、IT投資を減少させている企業は「コスト削減を主な目的としてクラウドを導入した新規顧客」と認識され、そこが主要顧客となっている。そのため動きが見られない現状維持の企業層は前述した「主要な顧客企業におけるクラウド活用状況と今後の予想」の数値には反映されないのだ。

「注意するべきは、今回の調査と自社の顧客のクラウド活用状況の割合が大きく異なる販売店です。その販売店の主要顧客層は『現状維持』を選択しているため、今後大きな収益は見込めない可能性があります」と岩上氏は警鐘を鳴らす。そうした顧客を抱える販売店は、既存顧客へのサポートはもちろんながら、特にIT投資を減少させようとしている企業に対してSaaSの提案を行っていくことが重要になるという。

「IT投資を抑えたい企業は、それだけ現状のシステムに課題があるということです。そこに販売店の提案力が生きてきます」(岩上氏)

Lesson 4 ユーザー企業に深く踏み込んだ理解が提案につながる

例えば、メールサーバーと販売管理システムサーバーの、合計2台のサーバーを定期的に導入していた企業がIT投資を抑えたいと要望した場合、サーバーのコストを抑えるのではなく、思い切ってメールサーバーをクラウドにリプレースするといった提案を行う。一時的に投資額は減少するが、メールサーバーにかからなくなった原資を販売管理システムのブラッシュアップに投資すれば、外出先から在庫確認ができるようになってタブレットも合わせて提案できるようになる可能性が高まる。

「商材をオンプレミスだけに限定していると収益は減少していくだけとなる可能性もありますが、クラウドとオンプレミスを組み合わせることでビジネスが広がります」と岩上氏。

そのために必要となるのが、ユーザー企業がシステムをどういうところでどのように使っているかといった部分の理解だ。オンプレミスの売り切りのビジネスから、よりユーザー企業に深く踏み込んだ継続的なビジネスが求められる。

岩上氏は「そのために必要なのはやはりスキルアップ。日頃から情報収集をして、提案の仕方を変えていく必要があります。また、前述したようにドアノック商材としてクラウドを活用している小規模な販売店は自社の収益につなげていますので、規模の大きい販売店はそうした販売店とパートナーシップを結ぶのも一つの手です。例えば運用保守を行っていた大規模な販売店であれば、小規模な販売店に運用保守のサポートを行い、小規模な販売店はドアノックから収益につなげるクラウド提案のシナリオを組むといったパートナー事例が増えると、クラウドビジネスのチャンスがさらに広がっていくのではないでしょうか」と語った。

本日の講師
ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高 氏

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