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「ヒアラブル」がウェアラブルの本命か!? NECがイヤホン型IoTデバイスを開発

「ヒアラブル」がウェアラブルの本命か!? NECがイヤホン型IoTデバイスを開発

2017年07月24日更新

「ヒアラブル」がウェアラブルの本命か!?
新しいコンピューティングスタイルを提案

耳の中にある「外耳道」の形状は人それぞれ異なっているため、音響特性も人それぞれ異なるという。この知見はオーディオ業界では常識らしく、音響製品の開発にも生かされているという。この特性に目を付けたNECは耳音響を個人認証に応用して「ヒアラブルデバイス」を開発したのだ。

NECが開発したヒアラブルデバイス(イヤホン型端末)のプロトタイプ。
イヤホン型の端末を装着するだけでハンズフリーで個人認証ができるほか、ユーザーの位置の推定、顔の向きや姿勢などの活動状態が把握できる。

なぜイヤホンで個人認証できるのか
耳音響認証技術の「なるほど」

NECの「ヒアラブルデバイス」は掲載した写真の通りイヤホン型の端末だ。NECが開発したヒアラブルデバイスにはスピーカーやマイクのほかに、加速度センサーとジャイロセンサー、地磁気センサーによる9軸モーションセンサーが搭載されており、顔の向きや姿勢、移動などの情報が常時検出できるようになっている。ヒアラブルデバイスが取得した情報を利用することで、耳音響認証技術による本人の特定や地磁気による屋内での位置測位が可能となる。

また今回開発したヒアラブルデバイスにはBluetoothのワイヤレスネットワーク機能も搭載されており、スマートフォンと連動した活用やスマートフォンなどを通じてクラウド上のデータやサービスと連携した活用も可能だ。

なぜ耳にイヤホンを装着することで個人認証ができるのか、多くの読者はその仕組みを想像すらできないことだろう。本稿の担当記者も個人認証と耳の関連性すら理解できなかった。

NECの新事業推進本部 ヒアラブルグループでシニアマネージャーを務める古谷 聡氏は「簡単に説明すると」と前置きして「耳の中には筒状の外耳道があるのですが、その大きさや形状は人それぞれ違うのです。そのため外耳道内での音の伝わり方や反響の仕方は人それぞれ異なります。そこでイヤホンのスピーカーから音を出して反響した音をイヤホンのマイクで拾います。人によって異なる音響特性を利用することで、本人特定を実現しました」とわかりやすく説明する。

音は外耳道から鼓膜に届き、さらに中耳や内耳など奥へと進む。そのとき外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる反響音と、鼓膜を通過して中耳や内耳で反射して返ってくる反響音、外耳道自体からの反響音から信号成分や周波数帯などの特徴量を抽出し、その情報を認証に利用することで本人特定を実現したのだ。

イヤホンの装着中は認証が継続
なりすましのリスクを排除できる

そもそも外耳道の大きさや形状が人それぞれ異なることは、音響技術の世界では以前より常識だったという。あるとき新潟県にある長岡技術科学大学の研究者が音響技術を用いた提案をNECにした際に、NECのエンジニアが認証技術に応用できると着目したのが開発のきっかけとなった。

NECのヒアラブルデバイスに搭載される耳音響認証はユーザー認証の手段として非常に優れているという。NEC 新事業推進本部 ヒアラブルグループ 主任の阿部竜太氏は「認証にかかる時間は1秒程度。しかもイヤホンを装着している最中に何度も認証ができますし、イヤホンを外すと認証が解除されるので非常に安全性が高いです」と説明する。

さらに「本人なのに認証できない確率は2〜3%と低く、しかも認証の際にスピーカーから出力する音響信号は数100ミリ秒ですので、認証をやり直したとしても瞬時に完了します。また認証時に他人を受け入れてしまう確率はわずか0.01〜0.1%で非常に高精度です。指紋などと異なり他人の外耳道の形状を盗むのは困難なため、なりすましの心配もありません」とアピールする。

ID⁄パスワード認証や指紋認証は一度認証されてしまえば、サインアウトしない限りユーザーが入れ替わっても使い続けることができるというセキュリティ上の課題がある。これに対して耳音響認証はイヤホンを装着している間、本人を特定した状態で認証が継続され、イヤホンを外したり他の人が装着したりすると認証されない。

耳音響認証はスマートフォンやPCと連携してデバイスやアプリ、サービスの利用の本人特定に活用したり、入退館ゲートと通信して開閉したり、さらに重要インフラ施設の保守・管理や警備など安全・安心に関わる業務でのなりすましを防止したりするなど幅広く活用できるだろう。

個人認証に関連技術を組み合わせて
ヒアラブルソリューションを確立

ヒアラブルデバイスには地磁気を利用してGPSが届かない屋内でも位置測位できる技術やバイタルセンシング技術なども組み合わされている。例えば店舗や倉庫で従業員の個人認証、動線や状態などの活動記録、バイタルサイン測定などの管理のほか、本人を特定した特定の場面での音声ガイドサービスなどアイデア次第でさまざまなビジネスを生み出しそうだ。

古谷氏は「耳に装着するだけですから両手が自由に使えて業務の邪魔になりません。スピーカーとマイクを内蔵しているので、ハンズフリーでコミュニケーションすることもできます」と説明する。

なお掲載したイヤホン型の端末はNECが販売を目的に開発したわけではない。システム開発事業者や音響機器メーカーなどのメーカーに向けてヒアラブルデバイスに関連するテクノロジーを公開し、新しいビジネスを生み出すための実証に利用してもらうことが目的だ。

NECが目指しているのは同社が開発した耳音響認証技術や位置測位技術、バイタルセンシング技術、さらに音響のAR(拡張現実)技術などのヒアラブルデバイスに関連するテクノロジーをプラットフォーム化してサービス提供することだ。現在、複数の企業と実証を進めており、2018年第1四半期の事業化を目指している。

NECでヒアラブルデバイスの開発に携わる新事業推進本部 ヒアラブルグループ シニアマネージャー 古谷 聡氏(左)と
新事業推進本部 ヒアラブルグループ 主任 阿部竜太氏。

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