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サテライトオフィス誘致で雇用創出! 静岡県川根本町の試み

サテライトオフィス誘致で雇用創出! 静岡県川根本町の試み

2017年06月28日更新

過疎の町にIT企業のサテライトオフィスがオープン
〜地方創生事業の一環とした静岡県川根本町の試み〜

2017年4月23日、静岡県榛原郡の川根本町(かわねほんちょう)で、ゾーホージャパン(本社・横浜)のサテライトオフィスの開所式が行われた。人口減少の課題を抱える川根本町では、かねてより高度情報通信基盤整備に力を入れ、2015年12月に町内全域に光ファイバーと無線高速ブロードバンド環境を整備。サテライトオフィスとテレワークの推進を図ってきた。今回の取り組みのスタート時の雇用者は1人だが、3〜5年をかけて10人規模に増やし、コールセンター拠点、製品開発・翻訳拠点などに移行していく予定だ。

「ICTを活用した働き方」をテーマに
サテライトオフィス・テレワークの企業誘致

川根本町は、静岡県の中央部に位置する人口約7,200人(2017年5月1日時点)の町。大井川鉄道や高品質の「川根茶」などで全国的に知られている。かつては、東海4県(静岡、愛知、三重、岐阜)でもっともブロードバンド整備が遅れていると言われた地域で、通信環境の整備が行政の懸案事項だった。

その課題も、2015年12月に町内全域に光ファイバーと無線高速ブロードバンド環境を整備して解決。その環境を生かすべく、サテライトオフィスとテレワークの推進を図ってきた。同町の企画課 まちづくり推進室 室長の北村浩二氏は、今回の事業に取り組むことになった背景を次のように語る。

「地方創生の総合戦略が全国的に策定され始めた2年前、川根本町でも地方創生に関連した地域のアンケート調査を行いました。地域に一つだけある県立川根高等学校の生徒や、子育て世代の方にアンケートをとったところ、雇用の場がないという意見が40%もあったのです。とくに川根高校生においては、就職したい業種がないという答えが40%もありました。せっかく光ファイバーの敷設をしたというのに、働くところがない。こうした課題を解決するために、『ICTを活用した働き方』をテーマに地方創生関連の交付金を使って実施していこうと事業に着手したのです」

2016年10月には「川根本町ICTを活用したサテライトオフィス・テレワーク推進委員会」を開催。森副町長が委員長となり、金融機関、地域自治組織、NPO法人、民間企業、県、町が連携してサテライトオフィス・テレワークの推進を図っていくことを確認した。

「サテライトオフィス・テレワークの企業誘致を進めていくため、関係する組織や行政の情報共有を目的としています。サテライトオフィスに就職して町に来てくれても、民間アパートがないので住む所がない。そこで空き家情報の観点から企業誘致に力を入れている静岡県(中部地域政策局)と協力して取り組みを進めてきました」(北村氏)

そうした中で、サテライトオフィスについてはゾーホージャパンの参加が決定したという。

4月23日に川根本町東藤川地内にあるサテライトオフィスで開催された、ゾーホージャパン川根本町オフィスの開所式。

外資系ソフトウェア開発の日本法人が進出
オフィスは旧警察駐在所の木造平屋建て

ゾーホージャパンは、インドにグループ本社があり、取引先の情報を整理する顧客情報管理ソフトなどの開発を手掛けている。町が提供したサテライトオフィスは、かつて警察駐在所として使われていた木造平屋の建物だ。川根本町は、インドで成功しているサテライトオフィスの周辺と同じように豊かな自然に囲まれ、ストレスを抱えずに仕事ができる環境が魅力とのことだ。

同社では、昨年10月末からデスクオペレーターの求人募集を開始。オフィスも改修工事を経て昨年11月から実証実験を行ってきた。その後のプロセスを見てみよう。

・在宅テレワーク説明会の開催
2017年1月19日には、静岡県中部地域政策局主催による「在宅テレワーク説明会」が開かれた。講師を招いて、テレワークの基本的な情報から業務内容、仕事の探し方、先輩在宅ワーカーの体験談などを説明。

「平日の日中で参加者が集まるかどうか不安もありましたが、25人ほどが参加しました。テレワークに興味関心を持つ方々が多数存在することがわかりました。子育て世代だけでなく、退職したがまだまだ働けるというシニア世代も目立ちました。その一方で、ハードルが高い、思っていたよりも簡単に稼げないという声も耳にしました」(北村氏)

・実践につなげるための技能講習会
テレワーク説明会に引き続き、実践力をつけるための技能講習会も3講座開催。

例えば、「ライティングに関する講座」では、文章作成に関する基本的なポイントなどを説明した。「スマートフォンを使ったテレワーク技能講習会」では、実際にWebを使った仕事を提供しているサイトに登録し、どのような仕事があるのかを実際に体験。「いつでも、どこでも、だれでも」をコンセプトに、空いた時間で収益をあげたい人に適している「マイクロタスク型」のテレワークと、「在宅派遣・業務委託型」で家にいながら収入を得られるテレワークについて説明された。講習会終了後には、複数の参加者が講師に熱心に質問をしていたという。

「私も、スマートフォンを使って自分でクラウドソーシング企業に登録し、仕事をとる練習に参加してみました。単価は安いけれど、仕事の内容は簡単ですから根気強くやれば月に数万円は稼げるのかなという感覚は得られました。ただ、クラウドソーシング企業がちゃんと業務をチェックできる会社なのかの見極めが難しい。町として、アフターフォローもきちんとしている企業を町の人に情報提供できるかどうかも大事な点ですね。これは今後の課題でもあります」(北村氏)

ゾーホージャパンのサテライトオフィス。

企業、従業員1人の小さなスタート
第2、第3の企業への従業員確保が喫緊の課題

地方創生関連の交付金で着手したサテライトオフィスとテレワークの推進。現在のところ、1企業の進出による従業員1人だけのオフィスという小さな小さなスタートだ。これからの展開をどのように描いているのだろうか。北村氏は、ある程度の方向性が示されるまで企画部門で事業を推進していき、順次、労働政策部門や情報政策部門に継承していくという。

「ゾーホーさんは、2人目の従業員の募集を開始し、首都圏から採用したいと言っています。将来的には数人にしたい、1社だけでは心許ないので首都圏の関連企業も誘致したいと意欲を示してくれています。テレワークも、ニーズがあるということはわかっています。しかし、まだ海のものとも山のものともわからない部分もあります。一歩が踏み出せないという方もたくさんいるでしょう。これから基礎講座や技術講座を数年にわたって行い、企業の仕事を振り分けるプロデューサーなどの人材を育成するまでは企画部門で進めていかなければならないでしょう。その方向性を検討、見極めているところです」(北村氏)

スタートしたばかりで、とにかく、すべてが課題だらけだと北村氏は言う。中でも喫緊の課題はサテライトオフィス・テレワークへの従業員の確保だという。

「ゾーホーさんに続く第2、第3の企業が来てくれても、働く人がいないと意味がありません。地元で就業している人でも、よほどの魅力とスキルがないと転職してくれません。今回、ゾーホーさんのオフィスに就職された町内の方は、自然が豊かな環境に居ながらにしてITを使って首都圏のオフィスにいるように仕事ができて夢のようだと話しています。そういう話が地域に波及していくような仕組みも作っていかなければなりませんね」(北村氏)

サテライトオフィス内での仕事の様子。

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