ホーム > PC-Webzineアーカイブ > 現役ITコーディネーターが教える中小企業のIT投資事情

現役ITコーディネーターが教える中小企業のIT投資事情

現役ITコーディネーターが教える中小企業のIT投資事情

2017年05月17日更新

現役ITコーディネータがおしえる
中小・小規模企業者における IT事情とITビジネスの攻め口

政府は中小企業の活性化に注力しており、その方策の一つとしてIT活用を掲げている。そして中小企業におけるIT化を現場で支援しているのがITコーディネータだ。ITコーディネータは企業の外部専門家として自治体や各種支援機関、士業と連携して企業のIT化とIT利活用を助言し、事業の継続や成長に貢献している。特にIT人材の確保が難しい中小企業者、小規模企業者にとってITコーディネータは貴重な存在だ。そこで現役で活躍するITコーディネータに、IT人材を確保できない企業におけるIT化やIT投資の実情を伺った。

オーバースペックや無駄など
社内のIT環境の最適化が必須

インサイトアイ 代表取締役
松永菜穂子 氏

現在ITコーディネータは全国で6,300名ほどが活躍しており、その四分の三は企業に所属、四分の一が起業し活動している。活動内容は顧客の生産性向上等を目的としたサービスの提供をはじめ、自治体や支援機関および士業と連携するなどして企業のIT化やIT活用を支援している。


なお支援機関というのは地域の金融機関や商工会議所などを指す。これらの支援機関が顧客や会員向けのサービスとしてIT関連の支援サービスやセミナーを、ITコーディネータを通じて提供・実施している。
支援機関の依頼を受けて実際に企業のIT化やIT活用を支援しているインサイトアイ 代表取締役 松永菜穂子氏とLTシステム 代表取締役 廣木秀之氏に実情を伺った。


松永氏と廣木氏はITコーディネータの資格を取得して10年ほどのキャリアを持ち、両名ともにITコーディネータ協会が主催するITコーディネータ向けの研修の企画に参画するなど、企業の支援とITコーディネータのスキル向上に尽力している。


まず企業におけるIT化の実態について松永氏は「小規模企業のITに詳しくない経営者はベンダーや販売会社に言われるがまま、いろいろなサービスや商品を購入してしまっており、その内容を把握できていません」と問題点を指摘する。小規模企業者の経営者の多くはITの活用が必須であることは理解しているという。しかし提案されたサービスや商品が適切なスペックなのか、そもそも必要なのかを判断できないという。


その原因はやはりITに精通した人材がいないことだが、小規模企業者がITに精通した人材を確保する予算を割くことは困難だ。松永氏は「支援機関を通じて見積の精査を依頼されるケースが増えています。同様にすでに導入しているサービスの内容の精査と、契約の整理の支援依頼も増えています」という。さらに松永氏は「導入・利用しているシステムやサービスが稼働しているのかどうかも検証できない企業もけっこうあります」と指摘する。


実際にこんなケースがあったという。サーバーを導入する際にセキュリティやBCPの強化を目的にバックアップシステムも勧められて導入した。そして5年後、サーバーのリースが終了する際に、バックアップシステムが稼働していなかったことが発覚したというのだ。

IT投資の目的は売り上げアップ
クラウドやセキュリティへの意識

LTシステム 代表取締役
廣木秀之 氏

IT人材を確保できない企業にとって、導入時およびランニングのコスト負担や運用の業務負担を軽減できるクラウドサービスの利用は有効策だと考えられるが実態はどうなのだろか。


廣木氏は「古いシステムを使い続けている企業が多く、入れ替えが必要であることは理解しています。しかし数百万円の投資が必要となるため実行が難しい。その際にクラウドという選択肢もあるが、カスタマイズを加えると一気にコストが高くなり導入が難しくなります」と説明する。


松永氏は「クラウドは必ず提案しています。データを社外に出すことに不安を持つ経営者が多いですが、社内にあるよりも安全だと説明しています。システムの規模など導入環境によってはオンプレミスが有利な場合もあります。特にカスタマイズを加えるとコストが上がってしまう。業務をかたくなに変えたくない経営者や、元請けのシステムに左右される下請け企業のシステムでは、カスタマイズが必須となりクラウドを勧めづらくなります」と説明する。


クラウドと並ぶITの必須科目であるセキュリティも難しいという。松永氏は「中小・小規模企業者にとってのIT活用は、売り上げアップが目的なのです。業務改善は売り上げアップがあってこそ。セキュリティへの関心は決して低くはないのだが、売り上げアップにも業務改善にもつながらないため投資意欲はとても低い」と指摘する。

中小・小規模企業者のIT投資は 経営者の心情や資金のタイミング

クラウドサービスやセキュリティなどITへの投資意欲が旺盛ではない中小・小規模企業者へのITビジネスの攻め口はどこだろう。廣木氏は利益などに影響される経営者の心情とIT投資への意思決定を指摘する。


廣木氏は「中小・小規模企業者の経営者は新聞やニュースで知ったキーワードから思いつきで関心を持ちます。その際に資金に余裕があれば購入するのです。例えば決算前で利益が出ている場合はITへの投資を即断します」と説明する。


ただし「クラウドサービスを提案する際、月額5,000円ほどの安価なサービスであっても月々の支払いを嫌う傾向が強く、一方で50万円を支払って永続的に使えるサービスを好みます」と続ける。


そして「中小・小規模企業者の経営者は新しいものが好きで、特にガジェットが大好物です。ですからITに関心はあるのです。経営者の心情や資金のタイミングを見極めて売り方・買い方に工夫を凝らせば、IT投資を決断させられるのではないでしょうか」とアドバイスする。


松永氏は「売り上げアップにつながるIT投資の提案が理想ですが、業務改善で売り上げではなく利益が拡大することを説いてIT投資を提案することも有効だと思います」とアドバイスする。


まずは経営者との密接な関係の構築が第一歩だ。それには経営者と直接の交流を持つITコーディネータと、ベンダーや販社との連携が有効となる。

キーワードから記事を探す