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鳥取県が民間企業と連携してIT人材育成プログラムを推進

鳥取県が民間企業と連携してIT人材育成プログラムを推進

2017年05月19日更新

これからのモノづくりにはIoTが不可欠
〜IT企業の人材不足少解決のための「鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト」〜

鳥取県は、日本で最も人口が少ない県である(2017年3月1日時点で約56万7千人)。超高齢化が進むと同時に、生産年齢人口が減少。特に深刻な課題となっているのがIT関連の人材育成だ。今後のモノづくりにはIoTが欠かせないとの考えから、「鳥取県戦略産業雇用創造プロジェクト」(以下、CMX)を推進。民間企業と連携し複数のIT人材育成プログラムが進行中だ。CMXの取り組みとこれからの課題を紹介する。

医療機器などの成長分野で雇用創出へ
県内企業の人材育成や事業拡大を支援

「人口減少は全国的な流れですが、鳥取県はもともとの人口が少ない上に、若い人が県外に出て行く減少に歯止めがかからなく、厳しい状況が続いています。有効求人倍率は1.5以上。とくにIT業界の人材不足は深刻な問題です」と話すのは、鳥取県商工労働部 高度技能開発室長の福田憲一氏だ。


2016年の全国平均の有効求人倍率は1.36。企業の求人数が増加する反面、有効求職者が減る減少が続いており、鳥取県は全国平均よりも厳しい状況が続いているという。


このため鳥取県では、県内企業の事業拡大を支援するとともに、そのために必要な人材育成を目的としたプロジェクト(CMX)に2013年から積極的に取り組んできた。厚生省の地方を中心とした雇用創出事業の一つで、2015年までの第1期プロジェクトでは電子・電気産業、素形材、ICT産業を対象とした業務改善や人材育成事業を実施してきた。


昨年度からは第2期に入っており(CMX-2)、プロジェクト期間は2019年3月まで。概算経費総予算は11億円。期間中に正規雇用をする企業に対し、新規雇用者1人に250万円以内の補助対象経費を支給、期間中に440人の雇用創出を目標としている。


プロジェクトに参加資格のある企業は、鳥取県に事業所や工場があり、成長分野(医療機器、自動車、航空機、またはICT・IoT)で事業展開をしようとする事業者。取り組みの内容は以下のようになっている。


①共通講座
アドバイザー企業が講師となり、事業展開を図る上で必要な専門知識や技術について講義する。5講座を3回程度開催。


②専門家派遣事業
事業展開を進めたい県内中小企業が、今後の方向性・計画を検討する際に活用。専門家から助言・指導が受けられる。


③プロジェクト型人材育成事業
プロジェクトマネジメントの手法を取り入れて、雇用計画による新規雇用者に対して補助金で支援する。


④課題解決型高度ICT人材育成事業
求職者に向け、ICT企業に必要とされるスキルに特化した短期・集中的な研修を行う。


これらの事業の他に、素形材CAEソフトウェアや3D金属プリンターの活用支援などの事業も行っている。

IoTを活用して生産性を向上させる 工場の見える化の実証実験も実施

CMX-2ではIoT講座も実施している。今後のモノづくりにはIoTが欠かせないとの考えから、全4回の内容からなるプログラムを設けている。医療機器、自動車、航空機の成長3分野およびICT分野の新たな事業を成功させるためには、生産性向上の取り組みは重要課題だからだ。


これからのビジネスに不可欠なIT化の視点で、「IoT活用で工場の見える化」を図ろうとするワークショップとなっている。初回と2回目に総論を学び、3回目以降は希望する企業にIoTデバイスを貸し出して実証実験を行う。すでに3月8日から、菊水フォージング(米子市の鍛工品メーカー)で実施されている。


実験には富士通の「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」(以下、ユビキタスウェア)が利用され、システム設計や機器の設置、技術相談などに対応する。今回、実験に採用したのは、人や物の状態、状況、周囲の環境をセンシングし、解析・分析することで、工場などの現場環境で作業員の安全管理や位置管理、作業の効率化の検討ができる「ユビキタスウェアのパイロットパック」。


鳥取県は、パイロットパックが環境準備から検証までワンパッケージのサービスで、簡単にトライアルできるという点に着目。IoTに関心を持ちながらも、なかなか導入に踏み切れない企業に対し、実証を通してIoTの導入による効果を体験する機会を提供することで、県内企業でのIoTの普及・促進や生産性の向上を図ることを目的としたという。


菊水フォージングの実証実験では、位置情報、転倒・転落などを把握できる「ロケーションバッジ」を同社の工場で稼働するフォークリフトに装着。「位置情報の見える化」を行い、効率化の検討を実施した。
「実証実験の検証結果は4月26日の成果発表会で公開されます。CMXに参加した企業やIoTに関心のある企業に集まっていただき、ぜひ身近な実証実験の結果を役立ててほしいと考えています」(福田氏)

民間企業と連携してeラーニングも提供
IT人材を育成する「TORIoT」の試み

ビーコンと連動して位置情報などを把握できるロケーションバッジをフォークリフトに装着。位置情報は通信ゲートウェイとなるスマートフォン「FUJITSU Smartphone ARROWS M305/KA4」を経由してIoT データ活用基盤 「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」に送られ、分析される。

CMX-2の事業として2017年度に新たにスタートしたのがIoT人材育成プログラム「TORIoT(トリオット)」である。eラーニングの講座を通じて高度なスキルを身につけてもらい、最終的に鳥取県内のIT企業への就職を促すという試み。企画・運営を地元IT企業のラシックスが担当する官民共同のプロジェクトだ。


ERP大手のSAPジャパンの協力を仰ぎ、基礎技術講座と先端技術講座の2段階を用意した。プログラミングやセキュリティなどの基礎技術の講座、課題解決のためのアイデアソンやプロジェクト演習などの実践的な能力育成の機会をeラーニングで提供し、人材を育てる事業だ。


「県外の方が鳥取で受講するには環境的に難しい面がありますが、トリオットではeラーニングでPCを利用して全国で時間、場所を問わず受講していただけます。単なる講座を通じた知識習得だけでなく、具体的なプロジェクトを基に、製品開発的な取り組みにもつなげていけるような展開にしていきます。eラーニングで学びながら、鳥取県に来ていただき、アイデアソンやハッカソンなどのイベントでアイデアを出していただく。結果として、県内企業への人材提供の実現と、人口増加、ビジネスの拡大を図っていきたいですね」(福田氏)


これまで進めたきた事業の中で、企業が本格導入の際にどういう取り組みが必要なのか、気づいた問題をどう改善していくのか。そうした課題が明らかになってきたら、プロジェクト事業の中でさらに専門家を派遣したり、補償金を活用して取り組みを支援するシステムも用意していくという。


発表会ではどんな成果が明らかになるのだろうか。今後の取り組みにも注目していきたい。

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