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クラウドビジネス成功のカギは企業内評価体制の見直しにあり!

クラウドビジネス成功のカギは企業内評価体制の見直しにあり!

2017年04月17日更新

自社ビジネスが抱える課題解決のために開発した
パッケージソフトを稼働させるクラウド環境

パッケージソフトの仕入れ販売を行ってきた渡敬情報システムは、自社ビジネスの課題を解決するため、クラウドサービスを新たに開発し提供している。その渡敬情報システムに、クラウドとパッケージソフトの組み合わせ提案や、ストックビジネスを進める上での評価体制について話を伺った。

Lesson 1
クラウドを取り扱うきっかけは自社ビジネスの課題にあった

秋田の県南に位置する横手市に本社を構える渡敬情報システムは、受託開発のSI業務やパッケージソフトの仕入れ販売、ハードウェアの保守メンテナンスなどを行うIT企業だ。2012年ごろから自社で開発したクラウドサービス「Wapli」の展開を進めてきた。


Wapliの展開をスタートさせたきっかけは、自社ビジネスの課題解決のためだったという。渡敬情報システムの常務取締役を務める藤原弘樹氏は「10年ほど前から秋田だけでなく、首都圏でもビジネスを展開するようになりました。しかし納品したサーバーなどの保守サポートを行うとなると、リモートアクセスで対応する必要がありました。実際のハードウェアが目の前にない状態で対応することに不安を感じ、オンプレミス製品の代替としてクラウドを提案しようと考えるようになりました」と語る。


そこで開発されたのがWapliだ。当初はオンプレミスサーバーの代替としてクラウドサーバー(Wapli)を提供し、保守メンテナンスを行っていた。「オンプレミスからクラウドに切り替えたことで、当初は稼働していることが目に見えないので不安もありましたが、実際に稼働し始めてみると保守メンテナンスが非常に効率化しました。また部門間の連携も容易になるなど負担がかなり軽減しました」と藤原氏。その後、クラウド基盤上でパッケージソフトが動くよう開発を進め、販売管理ソフトや給与計算ソフト、財務会計ソフトなどをクラウド上で利用できるサービスを提供している。2015年からはwapliのベースをMicrosoft Azureに移し、サービスの名称を「Wapli mirai」と切り替えて拡販を進めている。

Lesson 2
販売店の従来の提案方法を崩さないWapli mirai

そもそもクラウド上でパッケージソフトを利用するメリットとは何だろうか。藤原氏は「各ソフトウェアベンダーも、自社のソフトウェアのクラウド化を進めていますが、複数のソフトウェアを同じ基盤上では利用できません。しかしWapli miraiはWindowsベースで開発されているため、Windowsのソフトウェアを複数稼働させられる環境になっています。例えば販売管理ソフトや給与計算ソフト、財務会計ソフトを混在してクラウド上に構築して統合的に管理できるのが、Wapli miraiの強みなのです。Azureに移行したことでWindowsベースの環境が整ったため、中小企業で主流となっているWindowsのソフトウェアをクラウドに乗せ換えることも容易に行えます。Azureのライセンス、ソフトウェアの乗せ換えを始めとした構築支援や保守サポート、基盤提供の三つがセットになっているのがWapli miraiのクラウドサービスなのです」と語る。


Wapli miraiのサービスをスタートさせたことで、販売店からの引き合いも増加したという。販売店からすればクラウドサービスであるWapli miraiとパッケージソフトをセットで提案することで、渡敬情報システムからのサポートもついてくるため、既存のビジネススタイルを崩すことなく提案が行える。また前述したとおりWindowsベースで利用できるクラウドサービスのため、企業がオンプレミスサーバー上で独自に開発したシステムの載せ替えも可能だ。販売店、ユーザー企業双方のビジネススタイルはそのままに、クラウドの利便性を享受できるのがWapli miraiなのだ。

Lesson 3
グループ企業全体でストックビジネスへ転換

同社ではOffice 365も取り扱っており、Azure基盤のWapli miraiと組み合わせた提案や単体での提案・導入サポートも行っている。導入先としては、既存のパッケージソフトに対する信頼感が根強い社会福祉法人や公益社団法人などが多い。特に社会福祉法人は高齢化の影響で事業拡大を進めており、拠点数が大幅に増加している。拠点が増えた場合でもクラウドであればインターネットにつながるPCがあれば利用できるため、導入率が高まっているのだという。


自社ビジネスの課題を解決するためにWapli miraiを開発した渡敬情報システムだが、クラウドビジネスに参入する上でのハードルは感じなかったのだろうか。藤原氏は「当社の親会社である渡敬は文具や事務機器を販売しており、早くからグループ会社全体がストックビジネスへ転換する方針を打ち出していました。そうした全社的な動きがあったため、ストックビジネスであるクラウドビジネスへの参入への抵抗感はあまりありませんでした」と振り返る。


従来のソフトウェア仕入れ販売やサーバーなどの販売、保守サポートといったビジネスを継承しつつ、ストックビジネスへの移行を進めていくためには、長く使える自社のクラウドサービスの開発が今後生き残っていくための道の一つだと考えたのだという。最近ではWapli miraiをオンプレミスソフトウェアのための基盤としてのみではなく、セキュリティやバックアップなど独自サービスも提供できるようにしており、総合的なクラウドサービスへと進化しつつある。

Lesson 4
クラウドビジネスに求められるのは企業の評価体制の刷新

ストックビジネスへの柔軟な転換が実現できた渡敬情報システムだが、そうした転換が難しい企業もある。実際に販売店に対しての訪問を行っている藤原氏に感触を伺うと「クラウドサービスという名称が知られ初めて10年が経ち、販売店の意識も徐々に変わってきていると感じています。一方、クラウドに対する意識が変わっているのは現場の人間のみで、経営者側の意識は変わっていないケースもよく目にします。具体的には、単発の利益を優先するため、クラウドサービスを販売するよりもオンプレミスのサーバーなどを販売した方が経営者側からの評価が高くなってしまい、オンプレミスの販売に注力してしまうというようなケースです。企業内の評価体制を変えなければ、ストックビジネスへの転換はなかなか難しいでしょう」と苦言を呈する。


オンプレミス製品は導入時の利益は大きいがリプレースの際にまた同じメーカーや販売店を選択するとは限らない。しかしクラウドであれば同じ環境をユーザーに利用して貰いながらサポートすることで、継続的な利益を獲得できる。顧客を手放さず継続的な商談の機会を得られる商材としても、クラウドサービスの方がメリットは高いのだ。


「クラウドビジネスは、スタートしてみれば難しいものではありません。まずは当社のWapli miraiとパッケージソフトを組み合わせて販売していただき、そこから自社クラウドの開発など、独自のサービスが行えるように企業の内部を変えていくことが重要になると思います」と藤原氏は販売店に対してエールを送った。

渡敬情報システム 常務取締役 兼 経済産業省推進 ITコーディネータ
藤原弘樹 氏

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