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南あわじ市の「バーチャルリアリティ」を使った「バーチャン・リアリティ」プロジェクト

南あわじ市の「バーチャルリアリティ」を使った「バーチャン・リアリティ」プロジェクト

2017年04月18日更新

おばあちゃんとの食事で南あわじ市をアピール
〜「あわじ国バーチャン・リアリティ」の取り組み〜

兵庫県南あわじ市といえば、2016年1月「南あわじを売り出そう 地域が元気になる事業」として「淡路島に新国家の樹立を」という架空のストーリーのもと「あわじ国」のWebサイトを立ち上げ、Web投票で「独立」したことで話題になった。2017年1月には、第1弾として、おばあちゃんと一緒に食事をしている気分が味わえる360度VR(バーチャルリアリティ)ムービー「あわじ国バーチャン・リアリティ」を特設Webサイトで公開した。ユニークな取り組みの背景や目的を探った。

おばあちゃんとのバーチャルな食事で
孤食の解決も狙うとんがった仕掛け

兵庫県南あわじ市が、2016年に第1弾として実施した「あわじ国」独立に続くプロジェクトの第2弾は「バーチャン・リアリティ」。バーチャルリアリティとの語呂合わせになっており、なんとも絶妙な名称といえる。南あわじ市の「食」をPRすると同時に、都会暮らしに疲れた人を癒しの空間へ連れていく360度動画というサブコンセプトもある。


日本では、一人での食事「孤食」が増えている。働き疲れて、帰宅してからの一人での食事では食事が楽しくなくなったり、簡単な食事で栄養が偏ったりなど、心身への影響も懸念される。


おばあちゃんは、いわばふるさとのシンボル。バーチャン・リアリティでは、そのおばあちゃんとの食卓を楽しめるバーチャル体験によって、ふるさとや田舎暮らしに想いをはせるというコンテンツとなっている。名古屋大学大学院 情報科学研究科 博士の中田龍三郎氏の研究によると「バーチャル体験でも、誰かと一緒だと食事がおいしくなる」という結果もある。


このようなコンセプトが生まれてきた背景を、兵庫県 南あわじ市 農商部 食の拠点推進課 課長の喜田憲和氏は次のように説明する。南あわじ市も人口減少、少子高齢化が進んでおり、活性化させるためには仕事づくり、雇用の安定、所得の確保が必要になる。そのためには、地場産業である食材の良さをきちんと伝え、販売促進につなげなければならない。さらに観光客に来てお金を落としてもらい、市外からのお金を地元で循環させるシステムを作らないと移住を検討している人の定住にはつながらない。


そうした課題の解決策として喜田氏は「まず、地域内にあるコンテンツを地域と連携してしっかり作り込んでアピールしていくことが必要です。南あわじ市を知っていただこうということで、2016年に『あわじ国』を始めました。検討委員会の議論で、『きれい・おいしい』だけでは見てくれないし、来てくれない。とんがった仕掛けを作る必要があるということで、2年目の2017年は、古民家を使って移住・定住をはかる、地元の食材をふんだんに使って食べる、家族大勢で食べる、それを、おばあちゃんの存在意義を見直して伝えていくというコンセプトが生まれてきたのです」と話す。


2015年にじゃらんリサーチセンターが行ったGAP調査によると、淡路島に行ったことがある人の中で、南あわじ市にまで足を伸ばした人の割合は6割だったが、そのうちの2割しか昼食を食べていなかったという。喜田氏が、「食」をキーワードにした戦略を進める背景にはこうした事情もあったようだ。

朝ごはん、夜ごはん、レシピ動画に あわじ国の豊かな食材が満載

画像は「あわじ国バーチャン・リアリティ コンセプトムービー」から引用

南あわじ市は、食料自給率170%を超える豊かな食の国でもある。360度動画コンテンツによって、バーチャンとバーチャルな空間で食事をすることで、食事をよりおいしく味わい、孤食もなくそうというあわじ国バーチャン・リアリティ。


その手順は次のようになっている。


①レシピ動画を見る

②あわじ国の料理を作る

③動画を見る

④動画を見る→スマートフォン向けYou TubeアプリとVRゴーグルで見ると(PCでも可能)、「バーチャン家の食卓」が広がる

⑤バーチャンと食べる…自宅やオフィスなど場所を問わず、やさしいおばあちゃんや大家族との食事が楽しめる


動画は「朝ごはん篇」「夜ごはん篇」に「淡路人形座篇」「うずしおクルーズ篇」という観光を紹介するおまけ動画がつき、地元の食材を使った5種類のレシピ動画もついているという構成だ。その内容は次のようになっている。


■「朝ごはん篇」(3分)


おばあちゃんが孫に語りかける構成になっている。


「寝れたか。久しぶりやな。忘れるとこやったわ」

「じいちゃんも楽しみにしてた」

「都会はインスタントばかり。しっかりお上がりや」

と卵焼きや野菜の入った味噌汁をすすめる。温かく、ほんわかとした雰囲気が伝わってくる。

■「夜ごはん篇」(3分)


「おーい、みんな、ごはんできたで」


おじいちゃん、おばあちゃんの声で、10人ほどの家族が集まって和気あいあい、賑やかな食事風景が描かれている。たこ飯をはじめ、所狭しと地元の食材の大皿料理が並び、


「おいしいか」

「仕事はどうなんや」

「身体大事にしてがんばってな」

「みんなで食べたらおいしいな」


などの会話が交わされる。


あわじ国の特産物を使って手軽に料理を作れるレシピ動画は「あまーいたまねぎステーキ」「シャキシャキレタスのお味噌汁」「淡路ビーフステーキ」「かんたんたまねぎドレッシング」「おろしたまねぎのちりめん和え」など、特産のたまねぎをメインにした5種類(各40?50秒)が用意されている。


いずれもふるさと納税の返礼品となっている食材をメインに使用したレシピで、ふるさと納税をすると、食材がそろうようになっている。これらの動画に登場する食材は、たまねぎ、ネギ、淡路ビーフ、淡路島3年とらふぐ、豚、鯛、レタス、淡路島牛乳など、食の国を象徴するものばかりだ。

定住につながる「着地型」の取り組みを サクラマスのPRや普及に力を入れる

ふるさと納税は、いま、どこの自治体もユニークな返礼品をそろえて積極的に取り組んでいる。


「南あわじ市でも2015年の10月から返礼品に取り組み、たまねぎ、淡路ビーフ、とらふぐなどをそろえたところ、年初からそれまでに600?700万円でしかなかった納税額が10月からの3カ月間で4億9,000万円にも達し、兵庫県で1位、近畿で5位という実績をあげました。引き続き総額を増やそうという方針で取り組んでおり、1万円以上のふるさと納税を申し込んだ人から希望者先着200名にスマホ装着型VRゴーグル『ハコスコ』をプレゼントするなど、バーチャン・リアリティのサイトを通じてふるさと納税にもつながるような工夫をしています」(喜田氏)


納税者の反応はどうなのだろうか。南淡路市のふるさと納税は、クレジットカードによる決済で入金を確認してから、礼状と領収書に添えて申込書を送る。喜田氏によると、取り組みが始まったばかりで、納税の時期が11、12月に集中するため、現時点では目立った手応えはない。年末いっぱいまで引っ張っていく工夫を考えていきたいという。


あわじ国やバーチャン・リアリティなど一連のプロジェクトは、これからどのような展開を見せるのだろう。喜田氏は、これまでは国の地方創生加速化交付金を活用してきたが、今年度で終了するという。市長も交代し、このまま続けていけるかどうか単独で立ち上がりにくい環境にあるという。


「外から人に来ていただき、お金を落とすだけでなく定住してほしいです。そういう『着地型』の取り組みをいかに伸ばしていくかがこれからの課題になると思います。これまでの食材に加えて、今年から積極的に取り組んでいるものに淡路島サクラマスがあります。天然ものは幻といわれるほどの希少種で、2年前から養殖がスタートし、試行錯誤の末、新ブランドが誕生しました。地域の商工会と観光協会が一緒になって売り込んでいこうと、20店舗が23種類のメニューを開発しました。いわば、魚(食=産業)と観光、商工会、行政とで連携して進めていく六次産業化の取り組みです。パンフレットやのぼりを作り、バーチャン・リアリティやあわじ国のサイトでもアピールしていきます。3月1日が解禁で、新聞やテレビなどのメディアも積極的に取り上げてくれています。この取り組みがどう発展していくか…まだまだ65点くらいでしょうか。これを100点に近づけていくのが当面の課題です」(喜田氏)

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