
モニターとのセット提案でサイネージ需要を獲得「CLIP PC」
新たなモニター需要を発掘
CLIP PC(クリップPC) CLPC-32W1
アイ・オー・データ機器の「CLIP PC(クリップPC)」(CLPC-32W1)は、手のひらサイズの小型PC。無料のサイネージ用アプリと組み合わせて、大型モニターで4K動画を再生できる。デジタル看板を実現するクリップPCは、新たなモニター需要を掘り起こす魅力的なガジェットだ。その開発の経緯や市場の可能性について、アイ・オー・データ機器に聞いた。
小型PCと大型モニターの組み合わせに需要を見出す
名刺よりも小さいコンパクトなサイズに、インテル Atom x5-z8550プロセッサーというクアッドコアの高性能なCPUを搭載したCLPC-32W1は、最大で3,840×2,160の4K動画を再生できるパワフルな小型PC。
64ビット版のWindows 10 Homeを搭載し、2GBのメモリーと32GBのeMMCストレージを備える。コネクターは、モニターに接続するためのHDMIをはじめとして、二つのUSB 3.0ポートとmicroSDXCカードスロット、マイク/ヘッドホン端子、そして電源を備える。
アイ・オー・データ機器といえば、PC用の周辺機器メーカーとして、特にモニターでは高いブランド力を誇る。CLPC-32W1を発売する前は、インテルのスティックPC「Compute Stick」を販売していた。周辺機器に特化してきた同社がインテルのPCを扱った背景には、モニター製品の拡販という目的があった。
Compute Stickを取り扱うことで、大手の家電量販店からも展示などの問い合わせがあり、店頭でCompute Stickに興味を示す顧客と接触する機会が増えたという。
そうしたビジネスを通して、同社の開発部では法人向けのサイネージ需要に合致した小型PCのニーズがあると実感した。その結果、新たな市場を開拓するために、今回のCLPC-32W1を自社開発することになったのだ。
4K出力がアドバンテージに
Compute Stickで得られた知見をもとに、より市場のニーズに合致した小型PCとして開発されたCLPC-32W1には、注目すべきポイントがいくつかある。
その一つが、二つのUSB 3.0ポートを備えている点だ。良い意味で割りきって作られていたインテルのCompute Stickは、最小限のコネクターとしてUSB 2.0を1ポートだけ提供していた。ハブなどを使えば、1ポートでも不便はないが、ユーザーからは二つ欲しい、というニーズが高かったという。
また、サイネージ市場を狙っていく上で、4K動画の再生は重要なアドバンテージになると考えられた。そのため、CLPC-32W1には高性能なクアッドコア仕様のインテル Atom x5-z8550プロセッサーを採用した。CLPC-32W1以前に商品化されていた競合の小型PCの多くは、ワンクラス下のCPUを搭載している製品が多く、4K動画の再生にはあまり適していない。
アイ・オー・データ機器では、CLPC-32W1の販売に合わせて、49型の4Kモニターも製品ラインアップに加えて、大画面の需要にも応えている。もちろん、無線LANに関してもIEEE 802.11acに対応している。
ビジネスという視点で考えたときに、大型モニターという商材の魅力は大きい。大型モニターを売り込むための商材として、CLPC-32W1によるサイネージ需要を発掘できれば、これまでとは違った商流を作り出せる。例えば、アイ・オー・データ機器の資料によれば、外食産業でのメニュー紹介やキャンペーン情報などの案内、診療所でのインフォメーション、店舗やサロンなどのコミュニティスペースでの電子ポスターとしてのニーズがある。
仮に、大判のポスターを製作して印刷するコストを考えると、今回のCLPC-32W1と大型モニターの価格は、圧倒的なコストパフォーマンスを実現している。なぜなら、アイ・オー・データ機器の49型4KモニターとCLPC-32W1をセットにしても、その実売価格は10万円台の前半程度で収まるからだ。それに対して、大判ポスターを一から製作するとなれば、デザインや印刷、用紙代などを加えると、1枚の製作だけでも10万円を超えてしまう例もある。
リモコン型マウスも用意
Compute Stickの販売でサイネージ需要を学んできたアイ・オー・データ機器では、CLPC-32W1の販売に向けて周辺のツールも充実させてきた。その一つが、静止画や動画を決められた時間に正確に表示する時間割看板というアプリの提供だ。この時間割看板アプリは無償で提供されている。カレンダーアプリのような設定画面になっているので、直感的で分かりやすい。サイネージとして表示したい画像や動画を選んで、配信日時を指定するだけでいい。
また、大型モニターは店舗などの高い場所に設置されるケースが多いことから、リモートで操作できるリモコン型マウスも製品化している。サイネージの多くは、動きはじめてしまえばほとんど設定を変えることはないのだが、それでもWindowsの操作が必要になるときもある。そのたびに、わざわざマウスとキーボードを配線するのは煩わしい作業になる。そこで、離れた場所から基本的な操作が行えるリモコンは有用だ。
このほかにも、外付けタッチモジュールの「てれたっち」を組み合わせると、低コストのタッチ操作式ディスプレイを実現できる。教育市場での電子黒板としてだけではなく、オフィスの会議室におけるコミュニケーション用の「デジタルハブ」として提案可能だ。すでに大型モニターが設置されている会議室であれば、CLPC-32W1とてれたっちを導入すればいい。
アイ・オー・データ機器では、「内線ミレル」という内線番号を案内するアプリも提供しており、CLPC-32W1にインストールしてタッチモニターに接続すれば、短期間で実践的な受付システムを構築できる。
モニターの需要からビジネスを発掘するCLPC-32W1の存在は、これまで見落としていた市場に新たな商機をもたらしてくれるだろう。
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