
独自ノウハウを結集したクラウドは提案力の高める
自社の独自ノウハウを活かしたSaaSは
開発の効率化と同時に提案の訴求力を高める
クラウドをベースとしたシステム開発をすることで、開発期間が大きく短縮できたりユーザーのニーズを即時に反映できたりするなど、開発側にとってもユーザー企業側にとってもメリットが大きい。加えて、個別カスタマイズではなくパッケージ化を行えば、より訴求力の高い提案が可能になる。今回は自社技術を活かしてクラウドアプリケーション(SaaS)を提供している日本システムデザインに話を聞いた。
Lesson 1
自社でのクラウド導入を契機に取り扱いを開始
今年で設立30周年を迎える日本システムデザインは、クラウドサービス「Salesforce」を中心としたシステム開発・提案を行っている企業だ。セールスフォース・ドットコムのコンサルティングパートナーであり、導入支援に加えアプリケーション販売も行っている。
クラウドを取り扱う以前の同社は、ソフトウェア開発を中心に、ECサイト開発などの受託開発を行っていた。そんな同社がクラウドを自社の商材として取り扱い始めたきっかけは8年前、Salesforceを自社で導入して活用したことが始まりだ。当時Salesforceの導入を発案した日本システムデザイン 取締役 水本 良氏は次のように振り返る。
「当時はクラウドというキーワードがちょうど話題になっていました。ビジネス自体が大きく変わる兆しを見せており、当社が提案を行うユーザーよりも半歩先に新しいことを取り入れなければまずいという危機感もありました。実際に導入してカスタマイズなどを含めて運用をスタートしところ、これはすごい製品だと気づきました。当社が一週間かけて開発するようなシステムが15分から20分でできてしまうためです。当社の仕事が奪われるな、と肌で感じました」
それをきっかけにSalesforceをベースにしたシステム開発をスタート。現在では全社員の約半数がSalesforceを利用した開発を行うクラウドサービス部門に所属している。
Lesson 2
検索技術を活かしたアプリケーションを開発
日本システムデザインでは、個々の企業に応じたクラウドのコンサルティング提案を行っている。主軸はSalesforceが得意とするSFAやCRM分野のカスタマイズで、業種や企業に特化した形で提案している。同社の執行役員でクラウドサービス部の部長を務める鬼丸真平氏は「Salesforceを基盤としていることで、導入までのスピードが非常に速くなったと感じています。ユーザーとアジャイル的にブラッシュアップを行えるため安心感も提供できますね」とSalesforceによる提案メリットを語る。
しかし、そうしたカスタマイズ要望の中で、検索機能に関する作り込みの要望が多いということに気づいた同社は、より手軽かつ迅速に検索機能を提供できるよう、システム開発を行わなくてもユーザーが検索画面を作成できるSalesforceアプリケーション「検索クリエイターPRO」を新たに開発した。検索クリエイターPROはアプリケーションであるため、新規に検索画面の開発すると平均5日間かかるところを15分で作成できる。「当社はもともとECサイトのノウハウがあったため、検索システムを開発する技術に長けていました。そのノウハウを集約してパッケージ化したのがこの検索クリエイターPROです」と鬼丸氏。Salesforceにもグローバル検索と呼ばれる検索機能があるが、思ったような検索結果がでないなど課題が多い。そうしたユーザーに対して同社のノウハウをアプリケーション化した検索クリエイターPROは大きな効果を発揮する。
Lesson 3
技術のパッケージ化で増加した引き合い
同社では、検索技術の高さを活かし、案件と人材を自動で素早く突き合わせるSalesforceアプリケーション「マッチングコーディネータ」の提供も行っている。本アプリケーションは、人材サービス業のユーザーが自社の求人サイトから求職者の情報を取り込んで、管理している求人情報とマッチングさせられる検索システムだ。人材サービス業の中には人の情報と仕事の情報をそれぞれ紙で管理して、マッチングを人の手で行っている企業も多いため、そのシステム化を助けるアプリケーションとなる。また、見込み顧客の希望条件にマッチする分譲や賃貸物件をマッチングする必要のある不動産業などでも活用でき、ユーザーに応じて作り込みなどにも対応しているという。
前述した検索クリエイターPROとマッチングコーディネーターを開発したことで、コンサルティング提案のみを行っていたころよりもユーザーからの引き合いが増えたと鬼丸氏は話す。一から開発するよりも迅速に機能を提供できるというメリットがあるが、加えてわかりやすいパッケージに落とし込んだことで訴求力も高まった。自社のノウハウをクラウドアプリケーション開発に活かしたことで、利益が得られた好例といえる。また、現在ロボットとSalesforceを組み合わせてマッチングコーディネータのプレゼンテーションをさせるなど、クラウドとロボットを組み合わせた開発も行っている。
Lesson 4
地方でも変わらない速度で開発できる
日本システムデザインは、東京本社以外に鹿児島に事業所を設けている。これは同社の代表取締役社長の梅北千広氏が鹿児島県出身であり、鹿児島市の企業誘致を受けて2001年に設立したものだ。「鹿児島は東京の3年遅れでITシステムなどのブームが来ます。そのため、事前にITトレンドを取り入れておくことで競合他社から先行できるメリットがあります。当社は鹿児島市でもSalesforceを活用して地場産業企業への業務システム開発および運用保守などに対応しています」と水本氏。クラウドを活用することで、サービスレベルもスピード感も変わらずに開発できる。
鬼丸氏は「クラウドを開発プラットフォームとしていることで、開発環境や場所の制約などはほぼなくなりました。今はどれだけユーザーに求められる人材になるかが提案成功のカギを握っています」と語る。「Salesforce業界の中でマッチングシステムといったら当社、というくらい技術力は評価されています。今後は当社の技術力をパッケージ化したマッチングコーディネータを軸に、クラウドの中でもマッチング技術が評価されてナンバーワンをとれるよう、提案を進めていきたいですね」と水本氏は今後の展望を語った。
日本システムデザインのように、クラウドのコンサルティング提案に加えて自社の技術力をパッケージ化したSaaSを開発することで、他社への横展開が容易になるだけでなく、技術がわかりやすく伝えられるため訴求力も高まる。このようなビジネスの広がりはクラウドの大きなメリットと言えるだろう。
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