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千葉市美術館はICTを活用した訪日外国人へのおもてなし実証事業を実施

千葉市美術館はICTを活用した訪日外国人へのおもてなし実証事業を実施

2017年03月17日更新

千葉市美術館でICTおもてなし実証を実施
〜訪日外国人へ充実したおもてなしの提供を目指す〜

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、ICT(情報通信技術)を活用して訪日外国人をもてなそうという実証事業が「千葉・幕張・成田地区」で始まった。実証地域は千葉県(千葉・幕張・成田地区)、渋谷地区、港区地区(竹芝エリア、六本木・虎ノ門エリア、乃木坂エリア)の3カ所。その具体的な効果や課題などを探るための試みとして2017年1月4日、千葉市美術館でICカードやスマートフォン、電子看板などを連携させた実験がスタートした。日本で初めての「大規模実験」の背景と内容を紹介する。

千葉エリア、渋谷地区、港区において
ICTを活用したおもてなしの実証実験を実施

千葉県(千葉・幕張・成田地区)、渋谷地区、港区地区(竹芝エリア、六本木・虎ノ門エリア、乃木坂エリア)の3カ所で実施される実証事業は、総務省の「IoTおもてなし環境実現に向けた地域実証」事業の一環として行われる。


昨今、増加傾向にある訪日外国人による旺盛なインバウンド。政府は、2020年に訪日外国人の数を4,000万人にするという目標を掲げている。実験は、IoT時代の技術進歩の成果を踏まえ、日本を訪れる外国人のスムーズな移動、観光、買い物などを実現することが目的。ICカードやスマートフォン、デジタルサイネージなどと共通クラウド基盤を活用したサービスを可能とするため、首都圏の複数の地域で実証実験を行うというものだ。主な実証内容は、


■千葉・幕張・成田地区


・美術館へのチケットレス入場、スムーズな宿泊施設へのチェックイン、デジタルサイネージによる自国語での観光情報・経路案内などの提供、レストランでのスムーズなサービス提供
・目的地までの自動ナビゲーション、入場・決済などの簡略化


■港区


①六本木・虎ノ門エリア
・空港からリムジンバスを利用してホテルに宿泊する訪日外国人に対するスムーズな情報伝達、チェックイン、買い物や免税手続きの効率化
・レストランでの言語・食の禁忌などに対応した情報提供


②乃木坂エリア
・美術館の入館チケットの電子化、チケットレス入場
・デジタルサイネージによる自国語での文化情報の配信


③竹芝エリア
・デジタルサイネージとスマホによる自国語での観光情報・経路案内
・デジタルサイネージと連携した災害情報を多言語でリアルタイムに一斉配信


■渋谷地区


・街のイベント入場時にICカードやスマートフォンでチケットレス入場を可能にするなど、楽しめる仕組みを構築
・デジタルサイネージによる自国語での観光情報の提供

訪日外国人が多い千葉エリア
実証実験でおもてなしレベルを向上する

千葉・幕張・成田地区の実証事業は、総務省の「IoTおもてなし環境実現に向けた地域実証」の事業を一般社団法人おもてなしICT協議会(以下、協議会)が受託。千葉県、千葉市、成田市などの自治体も賛助会員として参加し、協力体制を構築していく仕組みだ。


協議会の目的として、訪日外国人へのおもてなしレベルを高めるためには、①スピーディで安全・安心な移動②多言語での情報提供③施設でのエキサイティングな体験④安全でボーダレスなキャッシュレス社会の実現が必要。これを実現するために、企業の枠を越えて商品開発や事業活動でパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、開発、販売、宣伝、物流のマーケティング、プロセス全体が社会を巻き込み、業界の枠や国境を越えて共創モデルを作らなければならないとしている。本協議会の理事長は慶應義塾大学 教授の西 宏章氏。日本の代表的な企業や団体、行政が理事社員・社員・賛助会員として参加している。


千葉・幕張・成田地区は、商業・宿泊・観光施設が多数存在し、成田空港から入国してこのエリアを周遊・宿泊する訪日外国人が多い。成田国際空港の国際線は年間3,500万人が利用している。東京オリンピック・パラリンピック時にフェンシング、レスリングの競技の開催が予定されている幕張地区は、訪日外国人宿泊客が多い。訪日外国人の宿泊客の伸び率は2015年比で、東京14市区152%に対し、幕張地区は186%となっている。千葉県、千葉市、成田市がインバウンド施策に積極的に取り組むゆえんでもある。


「東京都内の2カ所のほかに千葉エリアが選ばれたのは、何と言っても訪日外国人が多いことです。成田には国際空港があり、イオンモールナリタも訪日外国人からの人気が高いです。訪日外国人を対象とした実験を行う環境が整っているのです」(一般社団法人 おもてなしICT協議会 専務理事の奥田 悟氏)


実証事業では旅行代理店などを通じて、中国、台湾、タイなどから千葉を訪れる訪日外国人にICカードや各種クーポンなどをセットにした「おもてなしLucky Bag」1万セットを配布。日本に到着後、空港近くのホテルや美術館などに設置された専用の機器で、パスポート情報や食べ物の好みなどをICカードに登録してもらう。ICカードはイオングループの電子マネー「WAON」を採用しており、買い物にも使える。


事業に参加する千葉市や成田市のホテルやショッピングセンターにはデジタルサイネージを設置。ICカードに登録した言語で観光案内を行う。エリア内での実証内容は主に次の7項目だ。


①モニターの登録・情報の紐付け…ホテル、イオングループ各店、千葉市美術館、バスツアーの車中(ホテル・2月2日まで)


②チケットレス入場…千葉市美術館(2月26日まで)


③スムーズなホテルチェックイン…日本航空宿泊施設(3月10日まで)


④デジタルサイネージ上での自国語による観光情報・路線案内等の提供…千葉市美術館、イオン各店、各観光案内所、各ホテルなど15カ所(2016年11月から継続運用)


⑤多言語翻訳…千葉市美術館、千葉市観光情報センター、幕張観光情報センターなど(1月から継続運営)


⑥レストランでのスムーズなサービス提供…イオンイーハートレストラン(3月10日まで)


⑦バスツアー…新宿発日帰りバスツアーで実証施設に立ち寄り(1、2月中随時)

千葉市美術館で実証実験スタート
結果をもとに実用化をめざす

こうした実証実験の千葉市での第1弾となったのが千葉市美術館だった。同美術館では2月26日まで訪日外国人に人気の高い浮世絵を展示する「所蔵作品展 春を寿ぐ所蔵浮世絵名品展」を実施。実証内容のすべてを網羅している。ICカードは美術館の入場券として利用できるほか、カードを展示室内のタブレットにかざすと、作品の解説を英語や中国語など5カ国語からあらかじめ選んだ言語で読むことができる。


「今回の浮世絵展での実証は2月26日までです。他の実証もデジタルサイネージを除いて今年度分は3月で終了します。年度が変わったら同じ、あるいはそのほかのエリアで新しい実証を行う予定です。すでにさまざまな課題が出てきていますが、今回の結果をICカードの利用状況やビッグデータの情報も含めて分析し、総務省に報告します」(奥田氏)


総務省は、こうした実証結果をもとに2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの実用化を目指すという。「おもてなしの心」で五輪誘致を勝ち取った日本だが、ぜひICTの活用で多くの外国人観光客に日本のおもてなしと優れた情報通信技術を体験してもらいたいものだ。

千葉市美術館のICT事業内容

おもてなしステーション


パスポート番号などの情報とおもてなしICカード、スマートフォンを紐付けることで表示する優先言語などの属性情報を登録できる。


デジタルサイネージ


デジタルサイネージを活用した効果的な情報提供の仕方や表示する言語など、個人の属性に応じた最適な情報提供の仕組みの検証を行う。


①情報配信型のデジタルサイネージ
通常時は、観光情報(千葉周遊観光情報)、ホテル・観光施設など、設置場所の個別ニーズに基づいた情報を配信。
緊急時は、Lアラート(災害情報共有システム)を受信し、テロップの挿入や画面を切り替え、気象情報などを表示。


②インタラクティブ型のデジタルサイネージ
おもてなしICカードをかざすことで、カード内に保存されている個人の優先言語情報から、自国の言語で近隣の観光地などの検索が可能。


施設管理


①入館、入場手続きの電子化に伴うユーザビリティの向上の検証を行う。
訪日外国人が千葉市美術館に入館する前に、電子チケットの手配をスマートフォンアプリで行うことで、おもてなしICカードおよびクラウド上に発券履歴を書き込み、チケットレスでスマートな入場が可能。


②千葉市美術館内に4Kプロジェクターを設置し、ICTによる美術品の鑑賞を行う。


③千葉市美術館の展示室内に設置されているタブレットへおもてなしICカードをかざして、多言語化された作品の解説を表示。

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