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NECや富士通などが本腰を入れてVRソリューションを拡販

NECや富士通などが本腰を入れてVRソリューションを拡販

2017年01月17日更新

VR Virtual Reality

仮想現実が生み出すのは、「その場所」にいなくてもその場所にいるような感覚を得られる疑似体験。何度でもやり直しが可能な仮想現実の世界では、訓練や知識の深化において、さまざまな試みが実現する。

失敗が体験できる

法人VRソリューションでは、HMDやVR対応PCも一緒に提供される。

手の動きなどを検知するモーションコントローラーが付けられたHMDを装着すると、工場内の梱包ラインが目前に表れる。手を動かせば、HMDで見える仮想現実内の手も動く。現実の手の動きが仮想現実で表現される手と連動するため、仮想現実内の梱包ラインの作業工程を、自分の手を動かしながら体験できる。立体映像の単なる視聴にはない体験が、この仮想現実では得られる。


これはNECが2016年10月から提供を開始した「法人VRソリューション」で体験できるコンテンツの一つだ。NECでは2015年からルーター製品などの「Aterm」シリーズの工場生産ラインでVRの利用を進めてきた。「VRであれば工場の作業手順の説明が簡単です。言葉が通じにくい外国の方に対しても有効です」とNEC SI・サービス市場開発本部の野中崇史氏は話す。こうした自社の経験やノウハウを基に開発されたのが法人VRソリューションである。HMDやVR対応PC、ユーザー個別のコンテンツを包括的に提供する。

梱包作業のコンテンツ。

NECが法人VRソリューションの用途として提案するのは「トレーニング」「シミュレーション」「コミュニケーション」「セールスプロモーション」の四つ。トレーニングは冒頭でも紹介したような使い方で、工場などの作業や通常だと危険が伴う作業のトレーニングが可能だ。例えばビルの上層階など高所作業のトレーニングも行える。


取材時には、梱包作業のトレーニングに加えてキッチンでの火災消火や二つの高層ビルにかけられた一本の板の上を渡るようなコンテンツが用意された。ハードやコンテンツの進化もあり、没入感が高まったVR空間内では、火災消火コンテンツでは火災時のパニック感がわきあがり、高所コンテンツでは高所の恐怖感が醸成される。「VRならば現実では失敗できない場所でのトレーニングが何度でも実現します」(野中氏)

梱包作業のVRコンテンツでは、目の前に広がるVR空間で実際の身体の動きと連動した梱包作業の訓練が可能だ。モーションコントローラーによって検知された手の動きがVRコンテンツに反映される。写真ではHMDで見えている映像がモニターに映し出されている。
キッチンのレイアウトなどの確認も可能。

仮想空間で会議

シミュレーション用途では、3Dスキャンした映像からVRコンテンツを作成してそのコンテンツ上にCGを重ねてオフィスなどのレイアウトを確認するといった使い方や、工場内における作業の可視化による改善などを実現する。「VR空間では作業時のログが取得できます。作業者の動きから負荷なども把握できるため、工場内のレイアウトの最適配置などにつなげられます」とNECソリューションイノベータ イノベーション戦略本部の森口昌和氏は説明する。VR空間では現実の世界と比較してさまざまなログの取得が容易に行える。そのログを分析することで、効率的な改善活動が可能になる。現実の世界でログを取得しようとすれば、あらゆる場所にセンサーを設置しなければならず、コストもかかる。そうした課題をVRは解決する。


さらに高度な利用方法がコミュニケーションだ。これは、複数拠点の複数人がVR空間に同時にログインして共同作業や会議などを行うイメージだ。「例えば、工場の生産ラインのコンテンツに複数人が同時にログインして作業を分担して行ってみるような使い方が可能です。研修なども仮想空間の中で実施できます。また、従来のテレビ会議をVR会議にすることも可能です。こうした使い方は、すでに社内で検証を進めています」(野中氏)


セールスプロモーション用途では、博物館やホテル、観光名所などで体験型のコンテンツの提供が可能になる。例えば、博物館に展示されている展示物の歴史をVRで来館者に体験させたり、ホテルのウェディング施設を事前にVRで確認できるようなサービスが実現する。「ウェディング施設などでは、当日でないと把握が難しい実際の雰囲気やレイアウトをVRで事前に体験可能になります。遠方のお客さまが実際の式場に足を運ばなくても、近くの支店などで確認できるようなサービスも提供可能です」(NECネッツエスアイ テクニカルサービス事業本部 大室慶太氏)

1年間で200社に提案

森林伐採のトレーニング画面。

「2016年になって一気にVRの認知度が高まりました」と野中氏は話す。法人VRソリューションの提供以前からVR関連のアナウンスをしてきたNECへの問い合わせは、2016年に飛躍的に増加した。「昨年は1年間で200社程に提案しました」と森口氏は興奮気味に振り返る。法人VRソリューションは、多くの企業担当者への提案活動などを通じて得た企業ニーズを汲んで開発されている。用途として提案されているトレーニング、シミュレーション、コミュニケーション、セールスプロモーションなどは、そうしたニーズから導き出された。


ただし、企業が法人VRソリューションをいきなり導入するのは難しいだろう。ほとんどの企業はVRを自社で利用した経験がない。そのため、NECが提供する法人VRソリューションには、法人向けVRコンテンツを試せる「VRお試しパック」が有償で用意されている。


VRお試しパックでは、HMDやVR対応PCなどのハードウェアと、工場ラインの梱包作業や森林伐採の体験といったトレーニング用途などのサンプルコンテンツ一式が貸与される。ユーザーが保有する3D CADデータを取り込んでVR環境で閲覧可能な状態での貸出を可能にするオプションもある。「お客さまが法人VRソリューションを検討しやすいように用意しました」(野中氏)

左から NECマネジメントパートナー 春山仁志氏
NECネッツエスアイ 大室慶太氏
NEC 野中崇史氏
NECソリューションイノベータ 森口昌和氏

法人VRソリューションで提供されるハードウェアはユーザーニーズによってさまざまな組み合わせが可能だ。コンテンツもNECがユーザー個別に開発できる。「すでに、3Dコンテンツの制作や配信まで実績があります」と大室氏。また、制作したコンテンツをさまざまなプロモーションに活用するためのアドバイスやコンサルも可能だ。「イベントや展示会などにおけるコンテンツの使い方からプロモーションの仕方まで幅広く支援します」とNECマネジメントパートナー マーケットコミュニケーション事業部の春山仁志氏はアピールする。作成したVRコンテンツをできるだけ多くの用途で活用可能にすることで、企業の導入を促進する目的である。


これから本格化が始まるVR市場において、「NECの強みは総合的な提案力です」と野中氏は続ける。

「俯瞰型」のVRソリューション

zSpaceはディスプレイ、メガネ、スタイラスで構成される。アプリケーションを動かすためのワークステーションなども必要。

HMDを利用するソリューションだけがVRではない。据え置きのディスプレイに投映させるコンテンツをVR化させるソリューションとして富士通が提供しているのは、VRディスプレイ「zSpace」だ。


zSpaceは専用のディスプレイとメガネ、スタイラスで構成されていて、ディスプレイに投映されたコンテンツを専用のメガネで見ることで立体的に捉えられる。投映された立体物はスタイラスで掴んだり、回転させたり、断面を見たりできる。スタイラスは振動機能が搭載されていて、投映物をつかむアクションをしたりするとぶるぶると震える。そのため、zSpaceでは、視覚、聴覚、触覚の三感に訴えるVRが体験が可能だ。また、オブザーバー用のメガネを使えば数人での利用も実現する。オプションを利用すれば、外部モニターで疑似的に表現された3D表示も行える(今後のサポート予定)。

その特長をひと言で表せば「俯瞰型」だ。ディスプレイから仮想的に投映されるコンテンツは、目の前でぐるぐる回してさまざまな側面から表示でき、さらに内部に入ったような視点でも見られるからだ。「HMDを利用したVRは、HMDの装着者の視点からVRの世界を見ることになります。一方、zSpaceではVRコンテンツの全体を見られます。そのため、俯瞰型と表現しています」(富士通 統合商品戦略本部 ソフトウェアビジネス推進統括部 VR/ARソリューション推進部 部長 畠中靖浩氏)


zSpaceでは、投映されるコンテンツはVR化されるが、そのコンテンツを見る側は、VRの世界に入ってしまうわけではない。そこがHMD型のVRとの違いだ。一人称の視点か、三人称の視点かという区別もできる。もちろんHMD型が一人称であり、zSpaceが三人称だ。HMDを使ったVRでは、全方位360度、VRの世界が広がるが、zSpaceはディスプレイから目を外せば、現実の世界が存在する。この状況もまた現実と仮想の融合と表現できるだろう。こうした特長から、zSpaceではVRの体験をしながら、他の人とコミュニケーションが可能な環境が実現する。そのため、zSpaceはデザインのレビューをしたり学習をしたりする際に特にその効果を発揮する。また、専用メガネはHMDと比較して軽量でストレスが少ないのも魅力だという。「一般的なHMDはVR酔いしてしまうという課題がありました。zSpaceが採用している専用メガネは優れたトラッキング技術で酔いにくく軽量なので、長時間の利用でも疲れにくいのです」(畠中氏)

教育分野に強み

仮想的に表示された心臓のモデルをzSpaceで見ているイメージ。

zSpaceの利用用途として富士通が提案しているのは、「VR空間での体験的な業務トレーニング」「ものづくりの仮想検証」「手術ナビゲーション・医療トレーニング」「教育分野」「販売店向け販促・構成確認ツール」「インテリア/エクステリアシミュレーター」など。例えば設備メンテナンスなどの学習において紙や映像では難しい装置の立体的な把握や作業工程の確認がディスプレイ上で仮想的に行える。製造分野ではデザインのレビューを仮想的に表現された立体的映像で可能になる。流通や小売の現場では、展示製品の別の色のバージョンやオプションなどの構成を仮想的に表現して、お客に確認してもらえるようになる。


時計メーカーのセイコーは、zSpaceを利用して時計の仕組みや優れた機構の仕組みを直感的に理解できるコーナーを、セイコーミュージアムという時計の博物館に設置している。「VRで歯車を動いた状態で見せられる点が高く評価されています。歯車を一つ取ってしまうとどうなるかなどの体験を提供することで、時計の理解や自社のこだわりを伝えられると喜んでいただいています」(富士通 統合商品戦略本部 ソフトウェアビジネス推進統括部 VR/ARソリューション推進部 宮 隆一氏)


また、VRとの親和性が高い教育分野ではすでに大きな実績を持っている。米国では1万ユニットが導入されており、小中学校でも利用されている。各学校では20台程度を導入し、二人で1台を使って授業を行うようなイメージだ。「学習対象をVRによって表現することで、理解度を飛躍的に向上させられるのです」と宮氏は解説する。特に学習環境ではコミュニケーションも必要だ。その点、zSpaceはディスプレイから目を離せば現実世界が広がっており、周りの生徒と会話をしながらzSpaceを活用した学習を進めていける。


また、医療の分野においても、現実では実際に動いている人体を解剖して学習することは難しいが、zSpaceを利用すれば、臓器などの立体的な把握から内部の構造、臓器が動いている様子までを仮想的に学習できる。医師の技術向上などにも活用可能だ。

クルマなどの3次元モデルを仮想的に表現。あらゆる角度から見ることができ、内部の構造も把握可能だ。

Unityでの開発もサポート

(左)富士通 統合商品戦略本部 ソフトウェアビジネス推進統括部 VR/ARソリューション推進部 部長 畠中靖浩氏
(右)富士通 統合商品戦略本部 ソフトウェアビジネス推進統括部 VR/ARソリューション推進部 宮 隆一氏

zSpaceで利用するためのアプリケーションについては、SDKと開発ドキュメントが無償で提供されている。3Dゲームなどの開発プラットフォームであるUnity対応のプラグインによって、Unityでの開発もサポートされている。3Dモデルビューワーも用意されているため、すでに3Dモデルがあるのであれば、そのデータを活用することも可能だ。


zSpaceについて畠中氏は「イノベーションを起こすツール」と捉えている。今後は、産業、公共、文教、医療のトレーニング分野で、積極的な拡販を展開していくという。また、zSpaceを複数台用意したデモンストレーションの場も用意して、実際に周りの人とコミュニケーションを取りながらVRを活用できるzSpaceの魅力を伝えていく。「国内では大学の研究室などから導入され始めています。また、自動車メーカーからも強い興味を持っていただいています。使い方の要望もさまざまで、大きな広がりが期待できます」(畠中氏)


現時点ではzSpaceを動かすためにはワークステーションなどが必要になるが、今後は一体型の提供も検討されている。「米国ではすでに提供されていて、学校には一体型がメインで売れています」(畠中氏)

グラフィクス能力が命

VRに対応したワークステーション Dell Precision。メモリーエラーを避けるテクノロジーやパフォーマンスの自動チューニングソフトが搭載されている。

VRを利用するためには、HMDなどに加えてVRを動かすマシンが必要だ。VR元年とも言われた2016年、PCメーカー各社は、続々とVR対応PCやワークステーションを発表した。重要になるのはグラフィクスカードだ。法人向けと個人向け双方でVR対応製品を用意しているデルのクライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネス開発マネージャー 中島 章氏は、「VRはグラフィクスが命になります。高度な体験を得るためには、ハイエンドのグラフィクスカードを搭載している製品が必要です。そしてハイエンドのグラフィクスカードの能力を引き出せるのがハイエンドのPCやワークステーションになります」と解説する。


デルが用意しているのは、NVIDIAやAMDなどがVRの利用に適している製品を認定するVR Readyプログラムに対応した法人向けワークステーション「Dell Precision」と個人向けの「ALIENWARE」。法人向けのDell Precisionは、グラフィクスカードにNVIDIA QuadroシリーズやAMD FireProシリーズの搭載が可能だ。個人向けのALIENWAREは、NVIDIA GeForceシリーズを搭載できる。

デル クライアント・ソリューションズ統括本部 ビジネス開発マネージャー 中島 章氏

デルは、VRの法人用途では法人向けのワークステーションであるDell Precisionを提案している。その理由として、「個人向け製品とのサポートやものづくりの品質の違いが大きく、さらにワークステーションはグラフィクス能力に秀でており、プロフェッショナル用途での動作認証が、プラットフォームメーカー、グラフィクスメーカー、ISVなどでされているからです。もちろんワークステーションはメモリーなどのシステム構成においても、非常に高い構成を組めます」と中島氏は説明する。


Dell Precisionには、3000シリーズ、5000シリーズ、7000シリーズがラインアップされているが、VR用途でデルが推奨するのは、シングルプロセッサーのDell Precision 5000シリーズと、デュアルプロセッサーのDell Precision 7000シリーズだ。これらのシリーズであれば、快適なVR体験が可能になる。

ハードウェアに味付け

ワークステーションやPCにおいては、スペックだけを見ると各メーカーにそれほどの違いは見出せない。そのため、メーカーの選定で重要になるのが「メーカーならではの味付け」だと中島氏は話す。例えばデルではワークステーションのメンテナンス性を高めるために、他の部分よりも故障の確率が高い電源装置をワンタッチで交換できるようにしている。従来までならば、複数のネジを外したりしなければならなかった部分で、手間がかかっていたが、そうした手間を省く仕組みを導入した。


また、デルのワークステーションには、メモリーエラーの発生を防ぐ「Dell Reliable Memory Technology」が搭載されている。これは、問題のあるメモリーブロックをあらかじめ検出して使用不可領域とするテクノロジーだ。この仕組みによって、メモリーエラーによる作業停止を防止できる。顧客にVRサービスを提供している最中にワークステーションがフリーズしてしまうような事態を避けられる。


パフォーマンスチューニングを実現する「Dell Precision Optimizer」も採用されている。Dell Precision Optimizerはワンクリックでシステムの工場出荷時の設定を微調整でき、オートデスクなどのアプリケーション利用時のパフォーマンスを最適化する。「この機能をオンにすると、体感できるほど処理速度が速くなります」(中島氏)


サポート面でもデルは導入企業から評価されている。VRの総合プロデュースを行っているソリッドレイ研究所は、デルのサポート体制を評価してVRソリューション用システムにDell Precisionなどの導入を決めた。ソリッドレイ研究所のユーザーは国内外の各地に点在しており、デルが提供する年中無休の電話対応とエンジニアによる出張修理があることで、安心してユーザーにソリューションの提供が可能になるからだ。同社ではニーズに応じて使い分けられるように、Dell PrecisionとALIENWAREを合わせて80台以上導入した。「オンサイト保守の有無や、休日対応などは企業ユーザーにとって重要な部分です。そうした面においても、Dell Precisionは評価をいただいています」(中島氏)


VRやワークステーションの商機について中島氏は次のような見解を持っている。「これまではハイエンドのプロジェクターや複数のワークステーションなどでVRを実現するケースはありましたが非常に高価でした。現在のHMDとワークステーションの組み合わせなら、その1/10程度の価格で可能になります。導入コストのケタが一桁下がるわけですから、大変な進歩です。大企業以外にも市場が拡大するため、大きな商機が期待できます。VR関連のイベントへの参加やVRセミナーの開催といった活動も積極的に行っていますが、問い合わせが非常に増えています」


VR市場で重要になるのは、「ハード」「ソフトウェア・インテグレーション」「コンテンツ」の三本柱だと中島氏は指摘する。それぞれの分野のパートナーとともに、この三本柱を確立させて、VR市場を拡大させていくという。

VRで未来の学びの形をデモ

アスク ソリューション&コンポーネント事業部 営業推進部 部長 髙木 宏氏

VR市場に大きな商機を見出しているのは、グラフィクスカードの販売に強みを持ってきたアスクも同様だ。グラフィクス能力がカギを握るVR製品の販売に注力するのは自然の流れでもある。企業ユーザーからの問い合わせなどもあり、2015年からVR関連の製品を取り扱い始めた。


「Oculus RiftやHTC VIVEの登場で、一般の企業ユーザーが満足できるVRが提供できるようになったと判断しました」とアスク ソリューション&コンポーネント事業部 営業推進部 部長の髙木 宏氏は振り返る。

VRについては「変革の一つ」と髙木氏は表するが、そうした可能性をはっきりと見いだしている同社は、2016年のEDIX(教育ITソリューションEXPO)において、VRを利用した未来の学びの形のデモンストレーションを披露した。HMDにはHTC VIVEを利用し、海中を探検できる「the Blu」や空間に絵を描ける「Tilt Brush」などを用意。「3Dによって物事を学習できるVRは深い理解が得られます。すでに博物館などで展示物の説明をVRで行っているケースもあります」と髙木氏は学習分野におけるVRの強みを説明する。


実際、VRが普及期に入ったのは、HMDなどの性能が向上したからだ。従来までは映像処理においてレイテンシー(遅延)が発生していたので、長時間利用すると感覚のずれによりVR酔いになるケースが少なくなかった。しかし、「現在ではローレイテンシーで解像度が高く視野角も広いシステムが構築できるため、VR酔いがなく没入感の高いVRを実現可能になりました」と髙木氏は評価する。逆に言えば、性能の低いデバイスを利用したVRは、ビジネスの可能性を貶めてしまうリスクもあるということだ。


「EDIXでHTC VIVEを利用したデモを行ったのは、最新の高性能なデバイスを利用すれば、VR酔いはしないことをアピールする狙いもありました。というのも、すでに多くの学校関係者はVRの体験をしています。そうした方に共通するのは、VR酔いするから嫌だという声です。その認識を改めてもらうためにデモを行いました。実際、当社のデモを体験していただいた学校関係者からは、VR酔いしにくいという評価をいただきました」(髙木氏)


HTC VIVEが製品単体で一定範囲のVR空間を歩けるようにした点も、VR市場の加速に貢献するとアスクは考えた。HTC VIVEでは、動作追跡を実現するベースステーションを部屋に配置することで、HMDを装着したユーザーは動けるVRを体験できるようになる。こうした仕組みは「ルームスケール」と呼ばれるが、HMDを牽引してきた「Oculus Rift」もルームスケールに今後対応していくという。

ユーザーとコンテンツクリエイターを橋渡し

実際にアスクはVR製品として、HTC VIVEを中心としたHMD、デルやHP、レノボのVR対応ワークステーション、VR Ready対応のNVIDIA Quadroシリーズ、GeForceシリーズ、AMD Radeonシリーズなどのハイエンドのグラフィクスカードを用意している。「法人利用で推奨している環境は、NVIDIA Quadroシリーズなどのハイエンドのグラフィクスカードを搭載したワークステーションです。安定したVR環境を実現できるため、法人利用でも安心です」(髙木氏)


さらに、腕に巻くだけでVRに触れられる触感型ゲームコントローラーや、HMDに装着することでハンドトラッキングを可能にする高性能ステレオカメラなども扱っている。VR関連の幅広い商材を用意していて、スペックや製品の組み合わせは、ユーザーニーズに応じて適宜対応する。


また、企業ユーザーとコンテンツクリエイターとの橋渡しの役割も果たしていくという。「例えば、3D CADデータをVR化して建物や部屋の内装を顧客に見せたいという要望に対して、利用すべきハードとともにコンテンツクリエイターの紹介をして、お客さまのVRニーズを実現する支援をしていきます」(髙木氏)


すでに自動車関連のショールームや建築設計におけるVR利用で多くの引き合いがあり、提案活動も行っているが、今後はさらに市場の認知を進めて、需要を開拓していくという。「認知が浸透する中で多様化するニーズに、柔軟に対応できる環境を整備していくことも重要ですね」(髙木氏)

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