
NECがパートナー支援プロジェクト「Partner's ORION」を始動/AI、IoT、セキュリティの提案をパターン化して商材を拡販する
日本電気株式会社 執行役員
営業統括ユニット西日本担当
鈴木幸司 氏
AI技術の売り込みをグローバルで強めている
NECは2013年4月より取り組みを始めた「中期経営計画2015」および2016年4月の「中期経営計画2018」の一環として、先進のICT技術を活用した高度な社会インフラの実現に貢献する「社会ソリューション事業」に注力してきた。
NECは社会ソリューション事業への注力の背景として、世界の人口が2050年に1.3倍に増加するのに対して都市の人口は1.8倍も増加することを指摘し、そこで危惧されるエネルギーや食料などの資源確保の問題や、少子高齢化による労働人口減少などを挙げている。
そして将来の社会問題の解決にICTが大きく貢献でき、NECの技術力とソリューションが役立つと説明してきた。中でも近年NECが優位性をアピールしているのがセキュリティとAIの技術群だ。
NECは現在、サイバー攻撃への防御や生体認証などセキュリティにも活用できるAI技術群を「NEC the WISE」というブランドで展開している。NEC the WISEには「見える化」「分析」「制御・誘導」の3つのカテゴリーがあり、それぞれにNEC独自あるいは世界トップレベルの技術力を誇る。(別掲図を参照)
例えば「顔認証」や「テキスト合意認識」は米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した性能テストで1位の評価を得た実績がある。特に顔認証は3回連続で1位を獲得している。
こうした実績も認められ、NECの顔認証システムはニューヨークの国際空港の入国審査で利用されている。また米国とメキシコの国境では同社の指紋認証システムが利用されている。
セキュリティ、IoT、AIの需要拡大に期待
NECではAI技術をサイバーと実社会の両方の安心・安全に利活用するほか、社会基盤の運用・管理・保守、資源の需要予測や需要の制御による資源の適正利用、企業の顧客サービス向上や業務効率化、生産性向上などに向けて幅広くソリューションを提供する。
こうした同社の大きな取り組みの中で、国内でのビジネスの展開はどのように進められているのだろうか。NECが進めている国内でのビジネス展開について、同社 執行役員 営業統括ユニット西日本担当 鈴木幸司氏に話を伺った。
鈴木氏はまず「去年はビジネスを成長させるには、まずは安全を確保しなければならないとお話ししました。そして企業や社会の安心・安全に貢献できるセキュリティの技術やソリューションをアピールしてきました。2015年からセキュリティを中心としたビジネスが確実に伸び、現在はビジネスの効率化や生産性向上、新たな事業の創造に向けてIoTやAIへの関心が高まっています。またIoTやAIへの関心の高まりによって、セキュリティに対してもう一段高いレベルが求められています」と説明する。
IoTやAIに対するニーズは経営戦略に取り入れてリスク管理に活かしたり、マーケティングに取り入れて売り上げを伸ばしたり、需要予測に取り入れて効率化したりするなど、事例も出始めているという。
「ビジネスモデルキャンバス」を文化に
AIと一言で言っても前掲のNEC the WISEの図の通り、たくさんの技術や手法がある。鈴木氏は「何を提案すればお客様の価値を高められるのか、その提案は1つだけではありません。当社のNEC the WISEにある技術の組み合わせ方によって、さまざまな活用方法が提案できます」と話す。
同社はビジネスモデルを分析する代表的な手法である「ビジネスモデルキャンバス」(BMC)を取り入れた議論のスタイルを社内で構築している。BMCは一般的にビジネスモデルをいくつかの構成要素に分解して全体像を理解し、一つひとつの要素を検討して具体的なアクションを導き出すという議論のフレームワークだ。
鈴木氏は「お客様は自分たちが想定している価値とは別の価値を求めていたり、見出していたりする可能性があります。BMCは社内ではすでに定着しつつありますが、今後は販売店様などパートナー様とも一緒にBMCで議論したいと考えています。そしてお客様の困りごとを理解し、それを解決するのはNECのこの商材ですというストーリーで会話ができるようになれば、お客様の共感が得られるバリュープロポジションを生み出せ、ビジネスの幅がぐっと広がります」と強調する。
商材提案のストーリー化
今後はセキュリティのほかにIoTやAIへのニーズも高まるとは言っても、これらは適用範囲がとても広いため、顧客に何を提案していいのか困るというのが販売店の本音だろう。同社はこうした現場の状況も理解しており鈴木氏も「NECグループはみんな同じことを言うよね、と言ってもらえるような施策を進めている」と目を光らせる。
先ほどのBMCによる議論の目的は顧客の困りごとの抽出と分類、それらに対する商材提案のストーリー化、そしてこれらをパターン化することにあるようだ。つまり「総務部のお客様」には「このストーリーでこの提案をする」と「商談につながる可能性が高い」というシナリオのパターン集があれば、セキュリティやIoT、AIに精通していない販売店も効果的なコミュニケーションが進められるというわけだ。
パートナー支援プロジェクト「Partner's ORION」を始動
NECでは「Partner's ORION」という、パートナーに対して新たな商材とその売り方をセットで提案するプロジェクトを立ち上げた。現在、売り方シナリオ集を制作してパートナーに配布する準備を進めている最中だという。
Partner's ORIONにはNEC社内の営業担当者が培ったノウハウや、実験を実施して効果が見られた活動が問答集のような形式でまとめられているという。例えば「病院に行くならこういう話をすると関心が得られる」という内容らしい。
鈴木氏は「Partner's ORIONは1年半ほどかけて構築しました。パートナー様ごとに得意な分野が異なるので、売り方シナリオ集から選べるように展開していきます」と説明する。
パートナーが取り扱うNEC商材の領域と数を増やす
さらに鈴木氏は今後広がるIoTの領域についてセンサーに着目している。鈴木氏は「センサーが収集したデータを見える化したり分析したりするだけではなく、NECには優れたAI技術を活かした分析・解析システムがありますので、こういうデータがあればこういった活用ができるという逆の提案も可能です。つまり新たなセンサーの開発も提言できるのです。こうした取り組みにはパートナー様との協奏が不可欠です。今後はパートナー様が取り扱うNEC商材の領域や数を徐々に広げていただきたいと期待しています」と語る。
NECの国内ビジネスのシナリオは、顧客と直接コミュニケーションするNECの営業担当者と販売店がセンサーとなってセキュリティ、IoT、AIへのニーズを具体化し、体制が整ったところで提案活動を一斉に展開するという戦略のようだ。
ところで、こうしたNECの営業活動にも同社のAIを活用し、その過程や結果をAIで改善・学習して成果を上げていき、これらの工程と成果を公表してくれたらパートナーも顧客も関心を持つと思うのだが、いかがだろうか。(レビューマガジン社 下地孝雄)
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