
クラウドで商談先が広がるかも
情報システム部門に留まらない
クラウドベース開発基盤の提案先
販売店がクラウドベースの開発基盤(PaaS)を取り扱うことで、より柔軟な提案が行えるようになることは先月号で述べた。今回は「kintone」を提供しているサイボウズと、実際にkintoneを活用したシステム開発を行うジョイゾーに、PaaS提案のメリットを伺った。
1. Excelで行っていた顧客管理をクラウドへ
クラウドベースの開発基盤(PaaS)は、開発環境を用意すれば即座に必要なアプリケーションを開発できるため、ユーザーの業務改善を行いやすいクラウドサービスだ。例えばサイボウズが提供しているビジネスアプリケーション作成プラットフォーム「kintone」は、プログラミングをせずに業務アプリケーションの開発が行えるクラウドサービスで、企業が業務改善に必要とするシステムを非常に簡単に開発できる。
サイボウズのビジネスマーケティング本部でkintoneプロダクトマネージャーを務める伊佐政隆氏は「多くの企業で、Excelによる顧客情報の管理などが行われていると思いますが、複数名で一つのファイルを共有しているとバージョン管理がややこしかったり、編集のために一度オフィスに戻らなくてはいけなかったりします。システムに合わせて仕事をしているような状況になっています。kintoneでは、従来Excelで行っていた業務を変革できます。kintoneはクラウドベースの開発基盤であるため、kintone上で顧客情報管理システムを開発してしまえば外出先からでも顧客情報を編集できるようになり、業務効率の向上が期待できるのです」と語る。
多くの企業には「管理がややこしいExcel」が存在している。そのExcelデータの管理をクラウドに移行しませんか? といった提案でkintoneの販売につなげられるのだという。
2. 要望をヒアリングしながら目の前で開発
通常、システム開発は要件定義から運用に至るまでのウォーターフォールモデルで進められる。しかし、ウォーターフォールモデルは顧客の要望を取り入れた独自のシステムを開発することができる半面、運用開始までに時間がかかったり、実際に開発してから顧客からの要望とできあがったシステムに齟齬が生じてしまったりする課題があった。
そうした課題を解決するのが、kintoneのようなクラウド上の開発基盤を活用したシステム開発なのだ。従来のシステム開発では、完成したシステムをユーザーに納品するまでが一連の流れになっていたが、kintoneによって開発を行うと、顧客から要望をヒアリングしながら実際にシステムを目の前で作るというようなアジャイル開発が可能になる。
顧客は実際に目の前でアプリケーションが組み上がっていく様子がわかるため、「ここに訪問日を入れたい」など画面を共有しながら要望に対応できる。システム開発で発生しがちな齟齬が生じにくく、顧客満足度の高いシステムの納品が可能になる。
「実際に開発している画面を見ることで、活用のイメージがわきやすくなります。従来のシステム開発では作ることがゴールになりがちですが、kintoneによる開発では顧客の問題に寄り添って解決策を提示するような開発が行えます」と伊佐氏は語った。
3. 利益獲得のチャンスが多様な開発基盤
実際にkintoneを活用した開発を手がけるジョイゾーは、「システム39(サンキュー)」という定額のSIサービスを提供している。ジョイゾーの代表取締役社長を務める四宮靖隆氏は「打ち合わせは三回までなど制限を設けつつ、ユーザーからの要望をヒアリングして対面で開発を進めます。事前に業務での課題をメールでヒアリングし、Excelデータを実際に持ってきてもらいそのデータをもとに開発するなどしています」と語る。同社のシステム39は三回の打ち合わせの中でシステムを完成させて、最短二週間で納品を行うが、その後のフィードバックを受けた改修にも対応する。
kintone自体はライセンスのみを提供しているため、ユーザーはライセンスを購入して、自社で開発を行うケースもある。そうしたユーザーニーズに応えられるよう、サイボウズでは無償のアプリサンプルを約60種類用意して、サンプルに沿って開発ができるようにしている。また、ジョイゾーのようなサイボウズの販売パートナーが、顧客からフィードバックを受けた要望の中で、汎用性の高い機能などをプラグインとしてパッケージ化し、有償提供も行っている。そのため、kintoneを取り扱う販売パートナーは「kintoneライセンス提供」「kintoneシステム開発」「kintoneプラグイン開発」のように、利益獲得のチャンスが多様にあるといえるのだ。
4. ユーザーの業務課題を深掘りできる
kintoneによるビジネスについて伊佐氏は「対面によるアジャイル開発を行いながらユーザーが抱えている業務課題を聞けるため、打ち合わせを通して営業機会を見いだせるのも大きなメリットといえるでしょう。kintoneで解決できないことについては、連携サービスや販売店が自社で持っているソリューションなどと組み合わせて提案することも可能です」と販売店が取り扱う上での強みを語る。
また、従来システム開発を行う場合、契約を結ぶ部門は情報システムがメインだった。しかしkintoneによるシステム開発は、前述したように対面によるアジャイル開発がメインとなることに加え、業務課題に直結したアプリケーションが開発できることから、人事などの部門の人が業務上の問題を解決するアプローチとしてkintoneを選択するケースが増えてきており、ターゲットとなる市場が非常に大きくなってきている。
実際にkintoneでシステム開発を行っている四宮氏は「クラウド基盤で行うシステム開発は、作って終わりではないビジネスモデルです。販売店側もユーザー企業側も、意識を変えていかないといけません。当社がシステム開発を提案している顧客などは、仕様書ではなく実際に動くアプリケーションを見ることで『開発していて楽しいですね』と言ってくれています。顧客との信頼関係が築きやすく、関係を継続させやすいのも、kintoneの魅力ですね」と語った。
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