
SIMとMVNO 【SIMフリーとMVNOは法人とIoTが好き】
SIMの内容で差異化
MVNOとSIMの動きも見ていこう。「MVNOの認知度が高まってきて、MVNOの低額SIMを利用してみたいという法人ユーザーが多くなってきています」と話すのは、独自サービス型SIMのシェアで上位を走る通信サービス大手のインターネットイニシアティブ(IIJ) MVNO事業部の永野秀太郎氏だ。同社は2014年から法人向けに低額SIMの提供を開始している。「提供開始当時は256kbpsの通信速度でしたが、法人利用においては低速でも問題ないケースが多く、利用ユーザーが増えていました。現在はLTEにも対応しています」と話す。現状は既存のモバイル通信サービスから乗り換えたいという声が目立つ。中小企業のユーザーが多く、100回線以上まとめて導入するケースも少なくない。
MVNOが提供するSIMへの認知度が高まるとともに「ユーザー側ではどの端末を選択すればいいかわからないという課題が生じてきました。そうした中で、端末も一緒に提供して欲しいという要望を受けるようになりました」と永野氏は振り返る。そこで同社は法人向けにSIMロックフリー端末を販売する「IIJモバイルサプライサービス」で富士通のAndroid SIMフリースマートフォン「arrows M02」とNECプラットフォームズのSIMフリーモバイルルーター「Aterm MR04LN」の提供を開始した。「以前までは、端末はユーザーに用意してもらっていましたが、品質の悪い端末だと通信の質も悪くなってしまいます。そこで当社が品質を評価したお薦めの端末を提供することで、当社のSIMサービスを質の良い環境で利用していただけるようにしたのです」(永野氏)
提供するSIMのラインアップでも差異化は図れる。例えばVAIOはデータ通信のみのプリペイド型SIM「VAIOオリジナル SIM」を提供している。「1〜3年間のプランでプリペイド方式のため、予算化しやすい点が法人ユーザーに好評です」とVAIO 堀氏。最大通信速度200kbpsの基本通信モードは使い放題で、最大通信速度225Mbpsの高速通信モードの場合だけ容量制限がある。「高速通信モードについては1日の使用制限がないため、データ通信の使用頻度にムラのあるユーザーにも重宝していただいています」(VAIO 堀氏)
プラスワン・マーケティングではコンシューマー向けに提供しているSIMでLINEなどの特定のメッセンジャーアプリのデータ通信料を無料にするサービスを提供している。同社の榎本氏は「例えば、Office 365の通信料を無料にするといった独自のSIMを法人向けに展開していきます」とこれからの展望を示す。
IoT、M2M向けのSIMプランを用意
ニフティは2015年6月から法人向けSIMの提供を開始している。「企業が社員に支給するスマートフォンの通信サービス用途や専用アプリを利用するSIMフリータブレットなどで活用されています」と同社 ネットワークサービス事業部の苗村亮一氏は説明する。例えば、スマートフォンやタブレットなどを使った保守サービスや接客サービスを行う際に低額SIMを活用するケースが増えている。
同社の法人向けSIMのデータ通信プランは3GB、5GB、10GBの容量が用意されていたが、実際には3GBと10GBの利用に2極化しているという。コストを重視する場合は3GBプランを、動画などを多用する場合は10GBプランが利用される傾向にある。
ニフティは、IoTやM2Mというキーワードとともにさまざまなセンサーからのデータ収集用途が拡大する中で、新たにIoTやM2M向けの「スタートプラン」「1.1GBプラン」の提供を今年の3月から開始している。スタートプランは通信速度が最大200kbpsで月間のデータ通信容量は2.1GB。テキストデータの利用で低速でも十分なユーザー向けのプランだ。1.1GBプランは通信速度は最大262.5Mbpsだが、月間のデータ通信容量が1.1GBとなる。特定の期間だけ速度が必要なユーザー向けだ。例えばファームウェアのアップデートなどで速度が必要になるケースがあるという。「今後は、上り通信特化プランや夜間専用プランなど、さらに多様なニーズに応えるプランを用意していきます」とニフティ ネットワークサービス事業部の佐々木雅彦氏はアピールする。
クラウドサービスとともに
IoTやM2Mの世界では、機器やセンサーが取得したデータをクラウドサービス側に収集するためのネットワークが必要になる。そうした際に、MVNOが提供する低額SIMの存在が重要な役割を果たす。例えば、これからは屋外のネットワークカメラやタクシー、トラックの車載器、農作物のモニタリングシステムなどにもSIMが搭載されて、リアルタイムの監視やさまざまなデータ収集が行われるようになっていく。
また、このような環境下ではSIMフリースマートフォンがセンサーとクラウドサービスを結ぶハブ端末として活用されるケースもある。例えば、高知県で路線バスを運行するとさでん交通は、バスの接近情報を一目で把握できるバスロケーションサービスを提供するにあたり、同グループの約170台のバスに富士通のARROWS M305⁄KA4を設置し、約10秒周期で走行位置を収集して、バスの接近情報をユーザーがスマートフォンなどで確認できるようにした。バスから収集されたデータは富士通が提供するMVNO SIMを利用して同社のクラウドサービスに収集される仕組みだ。
MVNO SIMやSIMフリー端末は、IoTを実現するクラウドサービスを提供する上でも、欠かせない要素になっていくのだ。
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