
未来の働き方で組織と社会を革新、日本マイクロソフトの『テレワーク週間2015』
2015年8月に、日本マイクロソフトが「テレワーク週間2015」というイベントを実行し、様々な取り組みが実践された。その資料をもとに、ワーキング革命に取り組む企業の意識などを考察する。
社員の創造性や効率性を高める
日本マイクロソフトが開催したテレワーク週間に参加した企業の中で、ソニーはその目的や意義を次のように発表している。
「社員の創造性や効率性を高めることを目的としたワークスタイル改革活動の一環として、現在は育児や介護支援に限定している在宅勤務制度を、テレワーク週間に合わせて全社的に拡充し展開することを見据えた実証実験として実施する」
この文章からは、これまで後ろ向きに考えられていた在宅勤務のあり方を180度転換して、“創造性や効率性”という業務への貢献に向けて、働き方の改革を推進しようとする意欲が伝わってくる。また伊藤ハムでも「在宅勤務制度の導入に向けた検討会または勉強会の実施」と「多様な働き方の推進を検討するチームの発足」により、自宅でのテレワーク制度の導入に向けた議論をはじめているという。
本連載を開始した1年前は、まだ在宅勤務といえば、育児や介護によって貴重な人材がビジネスの最前線から離れてしまうことを防ぐための手段になると提案していた。だが、1年が過ぎて、ワーキング革命やテレワークの重要性が、経営的な視点から取り上げられるようになると、新たな取り組みの意義が生まれてきた。それは、「働き方の多様性を提供することが、企業の成長に不可欠」という意識だ。
例えば、米国の西海岸で働く有能な人材は、好んで街中のカフェやコミュニティスペースで、スマートデバイスとノートPCを使って仕事をする。その方が刺激的で創造的な仕事ができるというのだ。以前に、テレビで観た米Googleの社員などは、会社の敷地内を歩きながら会議をしていた。なんでも、会議室で座って話をするよりも、歩きながら会話している方が、新しいアイデアや意見が出やすいのだという。
こうした、海外での先進的な働き方の例を知ると、9時から17時まで同じ机に座って作業をしている環境では、個人の持つ創造性や生産性を十分に引き出せないのではないかと思ってしまう。
原動力はITのモバイル化
先日、日本テレワーク協会の会長へのインタビューや、岡村製作所のオフィス研究所で働く研究員への取材を行った。先に紹介した日本マイクロソフトのテレワーク週間という取り組みも、この取材の一環で知った情報だった。
日本では、ワーキング革命という意識が芽生えるよりもずっと前から、テレワークという働き方の改革が提唱されてきた。その背景には、主に通信事業者が新たな回線の活用先として提案していた時期もある。だが現在では、ワークライフバランスや人材活用という前向きな目的へと進化している。そして、岡村製作所というオフィス家具や住器を開発し販売する会社でも、日本の会社での働き方と空間の多様性を研究するレベルまで達している。
オフィス家具メーカーまでもが、働き方という方向からオフィス空間を研究するようになった理由の一つは、PCのモバイル化にある。かつては、PCといえば机に据え置かれていて、その配線などをすっきりさせるOAデスクやフリーアクセスフロアなどの需要が高かった。しかし、ノートPCやタブレットの普及によって、OAデスクの必要性は薄くなっている。
代わりに注目されているのが、働きやすさを追求したデスクやチェアの存在だ。実際に訪れた岡村製作所の研究室では、フロアの中にカフェテリアのようなスペースや、ソファーとテーブルのあるミーティング空間などがあり、これまでのオフィスの概念を覆すインテリアになっていた。オープンな空間で、研究員は自らが体験者となって、モバイル機器を活用して自由な場所で仕事をしていた。
こうした社内での働き方の自由さを実現するためにも、Wi-Fiに代表されるモバイル環境の整備は、ワーキング革命の第一歩となっているのだ。
キーテクノロジーはクラウドとモバイル
おそらく、一部の仕事を除けば、日本で働いている人のほとんどが、何らかの形でIT機器を利用している。その代表が、PCやタブレットになるのだが、POSレジやハンディターミナルのようなデバイスも、その中身が汎用品になりつつある。そうした中で、未来の働き方を実現していくためには、PCやタブレットをいかに自由にどこからでも使えるかどうかが、重要な鍵を握っている。
「出社して自分のデスクに座ってPCの電源を入れなければ仕事にならない」という働き方は、まさに旧来の姿であり、それを革新していくための取り組みが急務となっている。もちろん、解決するのは簡単ではない。先のテレワーク週間を実施したモデル企業でも、2014年にアンケートを集計したところ、働き方を変えていくための3つの課題をあげている。それは、「ICT環境の未整備」「制度の不足」「マインドの欠落」だ。
しかし、この中で制度とマインドは、現場と経営者が一緒になって取り組めば、必ず乗り越えられる課題でもある。むしろ、中堅や中小企業にとっては、ICT環境の整備が問題になるケースが多い。それを反対に考えると、顧客にワーキング革命を提案していけば、自ずとモバイルを主軸としたICT環境を商材として売り込めるチャンスにつながる。
そのためには、いかにワーキング革命が企業やビシネスにとって成果をもたらすかを実証しなければならない。そこで、シーズン2となる次回からは、ワーキング革命を実践し成功した企業への取材を中心に、その秘訣やノウハウを探っていく。
日本マイクロソフトが行った『テレワーク週間 2015』の記者会見では、賛同法人が651にものぼったことが発表された。
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