特集
ポストモダン・ビジネス

モバイル端末とクラウドの普及が顧客と企業の関係を大きく変えようとしている。顧客の情報取得環境が様変わりし、モバイルとクラウドサービスが情報取得時のメイン端末、メインサービスとして活用されはじめたことで、顧客へのアプローチの仕方そのものに見直しが迫られているのだ。めざましい速度で変化・進化する顧客の情報環境とニーズに合わせて、ビジネスを常に最適化していくこと。それは、ITを活用した次の時代のビジネスの在り方を指し示している。それが「ポストモダン・ビジネス」だ。本特集では、ポストモダン・ビジネスを形作る「モバイル」「クラウド」「ビッグデータ」「ソーシャルネットワーク」を中心に、IT活用、企業戦略、サプライヤー側に要求されるポイントなどを考察する。(編集部)

進化を続けるITの世界が新たなステージに移行したようだ。メインフレーム時代、クライアント・サーバー時代を経て、クラウド、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルネットワークという4つの要素が基盤となって、社会に大きな変革をもたらしている。経営目的を達成するためのIT投資が進むなど、ビジネスの手法にも変化が及びつつある。
モバイルデバイスが急成長しマルチデバイス化が本格化
ITの世界は新たな成長の段階に突入した。第3のプラットフォームとも呼ばれるモバイル、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルの四つの要素が、IT市場のみならず、ビジネスや社会に大きな変革をもたらそうとしている。情報にいつでもアクセスできる環境や、ITリソースがネットワークを介して安価に利用できる環境、新たな視点をもたらす膨大な情報の処理や個人のつながり、これらの要素が複合的に組み合わさることで、従来以上に便利で革新的なサービスが生まれやすくなっている。企業経営にも多大な恩恵をもたらすことが予期されているのだ。
具体的な市場動向をみていくと、新たなITの世界の牽引役となるモバイルデバイスの成長が際立つ。例えば、IDC Japanの調査ではタブレットPCの出荷台数は2012年に233万台、2015年には378万台へと成長することが予測されている。市場を開拓したiPadに加え、多彩なAndroid端末が各メーカーから発売されたこともあり、市場成長の土台が整ったようだ。あとはタブレットへの対応が予定されているWindows 8を搭載した端末が登場すれば、ビジネス市場への訴求力もさらに高まり、導入率が向上していくだろう。
スマートフォンの成長も著しい。特に2011年はスマートフォン市場が大いに飛躍した年であった。豊富なAndroid端末に加え、iPhoneがKDDIからも発売されたことが、ユーザー数を一気に増加させる要因となった。実際には、2012年には出荷台数で2,870万台、2015年には3,403万台に達することがIDC Japanによって予測されている。
タブレットPCやスマートフォンの加速度的な普及によって導かれるのは、マルチデバイス時代の本格化であり、これまで中心的な役割を果たしてきたPCが多様なデバイスの中の一つに過ぎなくなる。企業のシステムやアプリケーションもマルチデバイス対応が必須となっていく。
▼ 国内メディアタブレット出荷台数予測

▼ 国内スマートフォン出荷台数予測

出所:いずれもIDC Japan
業務アプリケーションをPaaSやIaaS上で稼働させる
クラウドもまたIT市場で飛躍的な成長を遂げている。国内市場における2010年から2015年の年間平均成長率は41.2%、2015年の国内市場規模は2010年比で5.6倍の2,550億円が見込まれている。特にクラウドプラットフォームであるPaaSやクラウドインフラストラクチャであるIaaSは、インターネットサービス基盤、アプリケーション開発基盤として活用されており、高い成長を果たしている。昨年から、PaaSやIaaS上で業務アプリケーションを稼働させる企業が増加しているという。
すでにパブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドの活用も始まっており、さらに、クラウドの構築に必須の仮想化システムのリソース運用を最大限に高めるためのネットワーク仮想化の技術にも注目が集まってきているなど、クラウド関連の技術・サービス動向からは目が離せない。
コスト削減やリソースの効率運用という視点の他に、事業継続や災害対策の手段としてクラウドを活用するケースも昨年から増えている。バックアップデータや代替システムをクラウドサービス上に確保しておくことで災害などに遭遇した際にも、早期の復旧が可能になるからだ。災害対策が施されたデータセンターのリソースを利用できるメリットもある。事業継続や災害対策としてのクラウド活用のメリットは震災直後から再確認されているため、今後は、企業の災害対策の再構築がクラウドを活用して進められていくだろう。
ビッグデータの分析が新サービスの創出に必須
ビジネス手法の変革という観点では、FacebookやTwitterに代表されるソーシャルネットワークサービス(SNS)が果たす役割は大きい。SNSは顧客の本音の声が巨大な固まりとしてネットワーク上に構築されているようなもので、顧客の趣味嗜好の傾向、製品やサービスへの評価などを直接収集できるからだ。
8億人を超えるとも言われているFacebookのユーザー数に表れているように、収集できるデータ量は莫大だ。しかも単純な掲示板と異なり、ある程度信頼関係が結ばれた友人や知人同士のつながりのなかでの発言であるため、収集できる内容の信頼性は高くなる。うまく活用できれば、従来以上に顧客に肉薄できるようになり、顧客との関係性の向上やサービス、製品の販促がしやすくなるだろう。自ずと経営戦略にも影響が及んでくる。
こうしたソーシャルネットワーク上で発信される膨大な発言の集まりなどがビッグデータとなる。ビッグデータはそれだけでは価値はない。分析して特定のデータを抽出できてこそ、はじめて価値のあるデータとなる。そのため、ビッグデータの分析・活用技術や関連サービス、製品などがIT市場で大きな価値を持ち始める。多様で大量のデータを迅速に分析し、価値を抽出できる技術が求められるようになるのだ。
現状では、Webサービスの利用顧客に対する行動履歴の分析などでビッグデータ活用技術が利用されている。サービスの見直しや新サービスの創出に、ビッグデータ分析から導き出されるデータが必須となる時代が、すでに到来しているのだ。
▼ 産業分野別スマートフォン導入率

▼ 国内クラウドサービス市場 セグメント別売上額予測

▼ 国内クラウドコンピューティング向けソフトウェア市場予測


