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ドローンで農作物への虫食い被害の拡大を防ぐ

オプティムはドローンに対応したビッグデータ解析プラットフォーム「SkySight」を開発し、実際に佐賀県の農業で活用している。その活用の効果と課題について迫った。

[2016.03.29]

ビッグデータ活用による農業の効率化を目指す


 日本の産業を取り巻く環境は厳しさを増している。人口の減少や、熟練した担い手の高齢化、減少などにより、技術伝承や生産性の向上が難しくなっているのだ。中でもその課題が顕著に表れているのが、農業だ。農業の主な担い手は高齢者が占めていることに加え、新たに農業に参入する人も、定年退職後の第二の人生として農業をはじめるケースが多く、若年層が少ないのが現状だ。


 そうした農業を取り巻く環境を変えるため、2015年8月に佐賀県生産振興部、佐賀大学農学部、そしてIoTプラットフォームの提供などを行うオプティムの三者が産学官で連携し、佐賀県でIT農業を実施していくと発表した。
佐賀県におけるIT農業の軸となっているのは、ビッグデータ活用だ。農業に関わるあらゆるデータをクラウドに蓄積して、農産物の生育管理を手軽に行えるようにすることで、人材不足の解決と効率的な農作業を目指す。具体的には、ドローン、IoT、そしてウェアラブルデバイスを活用して農業に関するあらゆるデータをクラウドに蓄積するという。


 そのデータ集積に活用されているのが、オプティムが開発したビッグデータ解析プラットフォーム「SkySight」だ。SkySightの最大の特長は、ドローンによるデータ集積に対応している点にある。SkySightの開発の経緯を、オプティム ビジネスユニットI リーダー 中野達彦氏は次のように語る。


 「もともとSkySightの前身となるビッグデータ解析プラットフォームの開発を進めていましたが、今回の佐賀県と佐賀大学との提携をきっかけに農業向けにカスタマイズしようと考えました。現在、ビッグデータ解析プラットフォームやIoTプラットフォームなど多くのサービスが展開されていますが、明確にそのプラットフォームで何をするのかというコンセプトが定まっている製品は少ないと感じています。そのため、当社では今回の提携を機に、農業という一分野にフォーカスしてSkySightをカスタマイズしました」

RGB解析により害虫の発生を検知

 カスタマイズの一つが、前述したドローンへの対応だ。現在佐賀県では、実際に農業関係試験場や佐賀大学付属農場などで、ドローンを飛ばして空撮を行っている。SkySightで行う分析は、空撮した映像を静止画データに分割しRGB解析を行っている。この解析により、農作物の葉の色の変化を捉え、農作物の虫食いなどを早期に発見できるような仕組みを実現している。


 「農業の場合、有機野菜や無農薬野菜などを育てるケースがありますが、これらに害虫が発生したら致命的です。無農薬で農作物を育てていると、害虫の広がり方が格段に違うため、すぐに被害が拡大してしまいます。そのため、SkySightではドローンで撮影した映像を解析して、葉の虫食いを発見し、管理者に通知する仕組みを作りました」と中野氏は語る。


 佐賀県には棚田が多くある。しかし、前述したように農業の担い手は高齢者が多く、傾斜地にある棚田をすべて見て回ることは体に負担がかかってしまう。そのような農家の人の足代わりにドローンを活用して農作物を空撮すれば、高齢者に負担がかからず、効率的に農業を行えるようになる。

データ量の大きな空撮映像の連携に課題

 

 ビッグデータ解析プラットフォームとしてドローンに対応したサービスは、SkySightが世界で初めてだと中野氏は語る。ではなぜこれまでドローン対応のプラットフォームが存在していなかったのか訊ねると、中野氏は「解析に至るまで、非常に手間がかかるからです」と回答した。


 「実際佐賀県で行っている活用でも、シームレスな連携とはいかずに課題が生じています。例えば、現在使用しているドローンは4Kに対応したDJIの『Phantom 3』を活用していますが、空撮した際に発生するデータ量が非常に大きいという問題があります。20分撮影すると4ギガバイトほどのMP4ファイルになり、さらにSkySight上で分析するためJPEGファイルに解体すると、大体50ギガバイトほどのデータ量になってしまいます。そのような大容量のデータを解析する仕組みを開発する負担の方が大きいと判断しているのだと思います。また、前述したように空撮した映像データのMP4ファイルは4ギガと大容量であるため、現状ではそのままクラウドにアップロードできません。そのため、一度SDカードにデータを保存して、それをPCで読み込んでアップロードしています」(中野氏)


 現状はすべてをIT化できているわけではなく、自動化ができない部分は人の手を介して分析を行っている状態にあるのだ。ドローンとSkySightをシームレスにつないで解析を行える仕組みを作ることが、今後の課題になるという。


 佐賀県と佐賀大学、そしてオプティムとの提携は今後3年ほどは続く見込みだ。現在SkySightとの連携は行っていないが、ウェアラブルデバイスによる農業支援も提携の中でおこなっているという。ウェアラブルデバイスはオプティムが提供する遠隔作業専用スマートグラス「Remote Action」を用いており、ITリテラシーの高くないユーザーであっても農作物の様子を遠隔にいる指導者と共有できる。また、農業を若者に疑似体験させることで、農業を身近に感じてもらうためのツールとしても活用しているという。


 農業ITを実現する上で、課題は多い様子ではあるが、中野氏は「トライ&エラーを繰り返しながら、よりよいプラットフォームへと変えていく。佐賀県は非常に柔軟な自治体なので、互いに走りながら、臨機応変に開発を進めています」と臆する様子なく意気込みを語ってくれた。今後のオプティムと佐賀県の農業ITの展開によっては、農業の未来ががらりと変るかもしれない。

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