menu
コンシューマー [ Consumer ]

果蜂園の養蜂業務を変革するIoT活用

蜂を飼育する養蜂場に適しているのは山の中など移動に時間がかかる場所だ。そうした移動時間のロスを低減できるIoTシステムをアドダイスが開発し、実際に養蜂場での活用が進められている。

[2016.03.28]

IoT AIデバイスの開発でIT企業と果蜂園が協業


 蜂蜜や蜜蝋などを得るために、蜂を飼育する養蜂家の多くは、遠隔地に養蜂場を所有している。養蜂場は、蜂が集める花粉の源となる蜜源植物が豊富にあったり、日当たりが良かったりする場所がよいため、山の中などの遠隔地が適しているのだ。


 しかし、養蜂家は蜂の様子を管理するために、温度や湿度の変化、エサ箱の様子や健康状態などを把握する必要がある。前述したように、養蜂家はアクセスの良くない土地に養蜂場を所有している。そのため、養蜂家は逐次自宅から養蜂場へ1日かけて出向かなければならず、業務の効率が良いとはいえなかった。また養蜂家は養蜂場を複数所有しているケースが多く、それらすべての場所に直接出向いて確認を行うのは大きな負担になる。そのような養蜂家の環境を改善するため、開発されたのがアドダイスの「Bee Sensing」だ。同社の代表取締役社長の伊東大輔氏は、開発の経緯を次のように語る。


 「もともと当社では、管理対象にデバイスを取り付けるだけで事業をIoT AI化できる『SoLoMoNデバイス』を提供していました。SoLoMoNデバイスは、管理対象のセンシングや作業記録の蓄積が行える製品です。このSoLoMoNデバイスの存在を、私の友人であり、はつはな果蜂園 代表の松原秀幸氏に話したところ、養蜂業に活用したいという話になりました。そこで、はつはな果蜂園と共同で養蜂業向けのIoT AIデバイスの開発プロジェクトを開始したのです」


 SoLoMoNデバイスは、本体から温湿度などを認識するセンサーが伸びており、管理対象のセンサーデータをクラウドに収集できる製品だ。また、スマートフォンアプリを介して、入力した作業記録をの内容もクラウドで収集する。クラウドに収集されたセンサーデータと作業記録の内容をもとにAIが学習を行うことで、次第に作業員が行うべきアクションを前もって通知してくれるなど、業務の効率化が図れる。そのSoLoMoNデバイスを養蜂業で利用するためにカスタマイズを行い開発した製品が、養蜂業向けIoT AI「Bee Sensing」だ。


養蜂場利用に最適化して巣箱の効率的な検査を実現


 Bee Sensingは、養蜂家が蜂を育成する巣箱に設置しやすいよう、本体を薄くしたり、GPSなど養蜂業に不要な機能をなくし、省電力化を図るなどした製品だ。「養蜂場は山の中など、人の手が入っていない場所にあることが多く、電源の確保が難しいという課題があります。そのため、太陽光のバッテリーのみで稼働できるよう、センシングするものを極力減らしています。具体的には、蜂は変温動物なので、急激な温度や湿度の変化には注意する必要があるため、温湿度センサーのみを残して利用しています」と伊東氏は語る。


 実際にはつはな果蜂園での飼育の実証も行った。蜂を飼育する巣箱の中には、巣枠と呼ばれる木枠が並べられており、蜂はその中に球体の巣を作る。Bee Sensingのセンサーは、球体の真ん中と外側にセンサーを配置して、巣箱の温湿度をセンシングする。


 「養蜂業では、巣箱を開けて中に入っている巣枠を一個ずつ取り出し、異常がないかチェックする必要があります。しかし蜂はストレスがたまりやすい生き物なので、これらの作業を15分以内に行わなくてはなりません。どの巣枠を確認するか、巣箱を開いてから判断していては、15分以内に確認を終えることは難しいです。しかしBee Sensingのアプリを活用して、以前チェックした位置を記録しておくことで、今回は何をすればいいのかが事前に判断できます。また、取り付けてあるセンサーデータの情報から、異常が発生している場所を重点的に確認するなど、効率的な管理が実現できます。AIによる分析も行っているため、データが蓄積されていけば、巣箱に生じている症状から講じるべき措置をAIが判断して、作業員が判断しなくても必要な作業を提示してくれるようになります」と伊東氏は語る。


ニーズに応じた商品展開が可能になった


 前述したように養蜂場への移動は時間がかかる。そのため従来は、例えば台風がきた場合などは巣箱の様子がわからず"とりあえず現場に行って確認"という管理を行っていた。しかしBee Sensingによる管理に移行したところ、センサーデータによって巣箱に異常がないことが遠隔で把握できる。これまで遠くに点在する養蜂場に向かうために5~6時間かかっており、移動時間が養蜂家にとって大きな負担となっていたが、このような遠隔管理を行うことで"とりあえず"の移動時間を削減し、定期的な養蜂場への訪問のみで巣箱の管理が行えるようになったという。「往復の移動時間を考えると、丸々1日分の時間が削減できたことになります」と伊東氏は活用の効果を語る。


 Bee Sensingの利用で得られるメリットは消費者に対してもある。「Bee Sensingのスマートフォンアプリで業務を記録できると述べましたが、これらの記録を消費者に対して開示することで、より安心感のある食品の提供が可能になります。具体的には、作業履歴を表示できるQRコードをはちみつの瓶のラベルに貼り付けておくことで、消費者に対してどの養蜂場の蜂蜜か、養蜂家は誰かなども含めた情報提供が行えるのです。これにより、安心感だけでなく『地元産を応援したい』という消費者ニーズや、季節ごとのはちみつの味を楽しみたいといったニーズにも応えられます。Bee Sensingを活用すれば一元化したサービスの中で、アプリからデバイス、履歴の共有まで踏み込んだ対応が行えます」(伊東氏)


 Bee Sensingの今後は、スマートフォンアプリのUIの改善などを行い、さらに養蜂業でつかいやすいシステム化を進めていく予定だ。

キーワードから記事を探す

IoT