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通行人の興味を引く「気づき」サイネージ

駅のホームやショッピングモールなど、様々な場所に設置されているデジタルサイネージ。紙媒体の広告とは異なり、映像を表示することも可能であるため、通行人の目に留まりやすいメリットがある。しかし、目に留まりやすいだけでは広告効果が低い。一方通行の情報であるためだ。そこでトーメンエレクトロニクスは、双方向性のあるデジタルサイネージを提供している。通行人に"気づき"を与えるサイネージの効果を探った。

[2016.03.26]

仮想試着を実現するサイネージの課題


 トーメンエレクトロニクスは、半導体を中心に国内外の電子部品や機器製品を取り扱う商社だ。これまで通信モジュールの輸入や販売を行うほか、M2Mに対する取り組みに力を入れていた。


 同社ではそのM2Mの技術を活用し、機器と人が相互にコミュニケーションできる製品の提供を進めている。その製品とは、デジタルサイネージだ。デジタルサイネージと言っても、ただコンテンツを一方的に配信する製品とは少々異なる。具体的には、双方向に情報をやりとりするデジタルサイネージだ。これを同社では「気づきサイネージ」と呼んでいる。


 同社のグローバルマーケティング本部 技術BU 技術部 技術企画グループ 森本芳秀氏は、気づきサイネージの始まりを次のように語った。「デジタルサイネージは、もともと空港や鉄道、バス停やホテル、ショッピングモールなどに導入される製品です。特にショッピングモールではデジタルサイネージを利用することで集客効果を見込んでいます。しかし、ただ映像や画像を表示するだけでは通行人の足を止めることはなかなか難しいという課題があります。そこで、ネクストシステムが開発したソフトウェア『バーチャルファッション』をデジタルサイネージに活用することで、通行人に気づきを与えるインタラクティブなサイネージを開発し、提供を開始しました」


 バーチャルファッションを利用したデジタルサイネージでは、服のCADデータや画像データを利用してバーチャルな試着などを楽しめる。デジタルサイネージに搭載された赤外線センサーが体の動きをとらえることで、動きに合わせて服が動いたり、腕を動かすことで試着する服を変更できたりする。デジタルサイネージ上のコンテンツが人の動きに合せて変化するため、店舗の前を通りかかった通行人の興味を引きやすい。実際、大型ショッピングモールや眼鏡店などに試験的に導入され、高い集客効果を上げたという。


 「しかし、バーチャルファッションを利用したデジタルサイネージは、表示するコンテンツを制作するのにあたりプロのカメラマンが服を撮影し、CADデータによって重み付けを行うなどの作業が必要になるため、非常にコストがかかってしまう欠点がありました。そこで、コストを抑えつつも双方向にやりとりが可能な、新たな気づきサイネージを開発して提供を開始しました。タッチ対応の両面デジタルサイネージと、コンテンツ制作に手間がかからない通信サイネージです」と森本氏は語る。


導入・運用コストを低減した双方向のサイネージ


 両面デジタルサイネージは、主に外国人向け観光客を対象にしたコンテンツ表示に適した製品だ。例えば多言語対応の地図コンテンツを表示することで、来日した外国人がタッチ操作で地図を確認したり、言語を切り替えて周辺情報を確認したりできる。通信機能も搭載しているため、電車の乗り換え検索や天気予報の検索にも対応する。2020年の東京オリンピック開催に伴い、増加する外国人観光客に対応するためのデジタルサイネージの需要を見込んだ製品だ。


 通信サイネージは、「Unsignd」(アンサイド)というサイネーシステムを活用して、コンテンツ制作の手間を大幅に低減している製品だ。同社のグローバルマーケティング本部 マーケティングBU マーケティング第三部 ユニットプロダクツ第二グループ 主任の武市桂次氏は「例えば、Twitterの指定したアカウントにテキストと写真を同時にアップすれば、当社のクラウドがそのデータを取得し、デジタルサイネージに配信します。テキストと写真はAIによって内容を判断され、最適なレイアウトで表示されます。フォントなどもすべてAIが選択するため、コンテンツ制作の手間がかかりません。例えば結婚式などの会合があったときに、集まった人が自由に写真とテキストを投稿していけば、ただ特定のコンテンツを配信するだけでなく、双方向的なやりとりを実現できます」と話す。


操作ログの取得も可能な通信アダプターを内蔵


 両面サイネージと通信サイネージは、バーチャルファッションを利用したデジタルサイネージと比較してコンテンツ制作に費用があまりかからない。同社のグローバルマーケティング本部 技術BU 技術部 技術企画グループ 主任技師の狩野浩行氏は「両面サイネージは前後のモニターに別のコンテンツをそれぞれ表示できます。2つのコンテンツを表示する場合は、通常は単純に2台のサイネージを導入する必要がありますが、本製品は1台で2台の役割を果たせるため導入コストが抑えられます。本体の厚みも24mmと非常に薄型のため、設置スペースを取りません。また、通常タッチ対応のモニターは、非対応の製品と比較して効果になりがちです、しかし本製品はサイネージの表面に光学式のタッチパネルのフレームを後付けしているため、コストを抑えてインタラクティブなデジタルサイネージを実現しています」と語る。


 これら2種類のデジタルサイネージには、トーメンエレクトロニクスが独自に開発した、M2Mゲートウェイ通信アダプターを搭載している。本通信アダプターは双方向通信によるリアルタムのデータ収集、制御、監視などに利用できる製品だ。


 狩野氏は「通信アダプターによって、デジタルサイネージにコンテンツの配信を行っています。3G回線に対応しており、ネット接続してコンテンツの切り替えができたり、Twitterから画像を取得したりできるのです。また、通信アダプターによって遠隔に設置されたデジタルサイネージの故障診断もできるため、現地に保守スタッフを向かわせる手間が省けます。現在は通信アダプターによって、デジタルサイネージに表示されるコンテンツを、どれだけ閲覧したかなどのログを取得していますが、今後はタッチ対応のサイネージであればどれくらいタッチ操作が行われているかなども検知して、操作のインタラクティブ性を高めていく予定です」と、M2M技術をデジタルサイネージに利用するメリットを語った。


 同社のサイネージは、当初から通行人に気づきを与えることをコンセプトに開発されてきた。しかし"気づき"の要素が、従来のバーチャルファッションではコストがかかりすぎてしまっていた。そこにM2M技術を利用することでコストを抑えながら"気づき"サイネージを実現したと言えるだろう。

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