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コンシューマー [ Consumer ]

専門知識がなくても画像センシング技術を活用できる

人の状態を認識する画像センシング技術は、従来デジタルカメラなどの用途に多く利用されていた。しかし、画像センシング技術を組み込む機器が多様化すれば、マーケティングや見守り、セキュリティなどさまざまな用途に利用できるようになる。オムロンが開発した画像センシングコンポ「HVC」は、画像分析を行うハードウェアとソフトウェアが一体となった製品だ。本製品と開発キットを活用することで、画像センシングを利用した製品の開発工程を大幅に削減することが可能になる。

[2016.05.25]

カメラ非搭載の製品に組み込み可能に


 人の顔を見つけて認識する画像センシング技術は、デジタルカメラや携帯電話に搭載されるカメラ機能などに活用されていた。例えば、人の顔を認識してオートフォーカスすることで、人の顔を鮮明に撮影したり、笑った顔の状態を認識して、その瞬間にシャッターを切ったりするような技術だ。オムロンの画像センシング技術「OKAO Vision」も同様だったと、同社のアプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部 HS企画部 主査 仲市 淳氏は語る。「当社のOKAO Visionは20年以上前に開発され、進化を続けてきた画像センシング技術です。5億ライセンス以上を販売しており、デジタルカメラや携帯電話のカメラ機能に組み込まれています。OKAO Visionの技術で特長的なのは、人を検知することに加え、人を属性に分けて分析できる点です。例えば男女の違いや年代、喜怒哀楽の判断が可能です。通常の画像センシング技術は、人が肉眼で見たときのような判断が下せないという欠点がありましたが、当社で技術開発を進めたことで、人に近い感性で画像を分析できる技術を実現できました」


 OKAO Visionの技術は、前述したようにデジタルカメラに多く採用されてきた。しかし、OKAO Visionはソフトウェアの形態で提供されているため、ハードウェア開発はユーザー側で行う必要があった。「1からハードウェア開発を行う場合、カメラ部品の手配や基板の開発などに時間を要します。そのため、これまで画像センシング技術の活用用途は、もともとカメラを組み込んでいるデジタルカメラや携帯電話などに限られていました。しかし、現在カメラを搭載していない製品でも、画像センシング技術を活用して大きな効果を上げられる製品は多くあります。そのため当社では、既存のハードウェアに取り付けるだけで人の状態を認識できるようになる画像センシングコンポ『HVC(Human Vision Components)』を開発しました。本センシングコンポは、顔認証、表情推定、年齢推定、視線推定、手検出などの人の状態を認識する画像センシング技術『OKAO Vision』のアルゴリズムとカメラモジュールを一体化した製品です」(仲市氏)


開発キットを利用して工程を大幅に短縮


 HVCは手のひらサイズの小さな基板だ。基板にはカメラ、CPU、機器と接続するためのインターフェースが搭載されている。HVCにはOKAO Visionがインストールされており、本製品を利用すれば、カメラによる人の認識から分析までを一括して行える。HVCについて、仲市氏は次のように語る。「画像センシング技術を利用した機器の開発を行える開発キットも提供しています。開発キットではHVC本体基盤に加え、各種機能の性能評価や認識パラメーターの設定をPC上で行える評価ソフトウェアと、PCと接続するためのインターフェース接続基盤、仕様書、取扱説明書をセットで提供しています。例えばユーザーがHVCを既存のハードウェアに組み込んで画像分析を行いたいと考えた場合、いきなり組み込んでも画像分析が成功するとは限りません。通常試作からスタートさせますが、本開発キットの評価ソフトウェアを使用すれば、HVCで画像を取り込んだ結果、正確に人が検出できるか、画像分析が可能かどうかを検証できるようになるのです」従来であればハードウェアの開発から検証環境の構築まで、すべてユーザー側が行う必要があったが、HVCと開発キットを利用すれば、その工程を大幅に短縮できるようになる。


 それでは、HVCの組み込み先として適した機器はどのようなものだろうか。仲市氏は「当社が想定している例としては、エアコンや自動販売機への組み込みです。例えばエアコンにHVCを組み込むことで、人の表情や動作をカメラで認識してその結果を分析、状況に合わせた最適な空調の制御が行えます。性別や年齢だけでなく、個人の特定もできるため、より個人にカスタマイズした動作を可能にできるのです。また、自動販売機にHVCを組み込んだ場合、マーケティングリサーチに活用できるでしょう。例えば自動販売機の前に立った人物の性別や年齢情報の収集を行って、性別ごとの商品の売れ行きが分析できますし、顔向き推定や視線推定、表情推定などの機能を用いることで、どの位置の商品を見てからこの商品を買った、などの細かな視線移動のデータも収集して分析を行い、マーケティングに活かすことが可能です」と語った。エアコンに接続する場合は、基盤に搭載されているインターフェースコネクターとエアコン側のメインのボードを接続すればよいという。HVCが認識した画像データは、分析した画像処理の結果信号だけをエアコン側に送信するため、エアコンの本体負荷が軽いのも特長だ。HVCは"顔検出""人体検出""性別推定""年齢推定""視線推定""顔向き推定""顔認証""表情推定""手検出""目つむり推定"といった10種類の人の状態を認識できるが、これらすべての状態を分析すると負荷がかかりすぎてしまう。そのため、ユーザー側は分析したい動作を絞り込み、HVCにコマンドを送信して設定を行う。どのようなコマンドを送ればどのような分析結果が返ってくるかなどは、開発キットに完備されている仕様書に記載されており、開発の専門知識がなくても設定が可能だ。


車載から医療まで幅広い用途に対応


 具体的な導入事例はまだないが、すでに様々な業種から引き合いがあるという。「例えば家電や自動販売機への組み込みはもちろんのこと、車への搭載や医療現場への導入、建物のセキュリティ用途など、お声がけいただいている分野は幅広いです。セキュリティで言うと、HVCに人物の顔と個人情報を登録しておくことで、顔認証システムとして利用するような用途でお声がけをいただいています」(仲市氏)


 HVCは法人向けに提供されている製品だが、オムロンはコンシューマー向けに「HVC-C(Human Vision Components - Consumer model)」の提供も行っている。HVC-Cは画像処理を基盤側で一括して行う点はHVCと同様だが、HVCにはない無線機能を搭載している。センシング結果をBluetoothでスマートデバイスに送信でき、スマートデバイス上のアプリで活用できる。例えば独居老人のリビングに設置して笑顔の量を計測することで、体調変化を察知するなどの見守りシステムとして利用できるのだ。


 製品の今後について仲市氏は「売上としては、3年後に30~50億を目標にしています。現状、HVCは暗いところで撮影ができないなどの欠点があるため、暗所でも撮影できるよう改善していきたいと考えています。また、現状でも表情の分析は可能ですが、例えば疲れているけど笑っているというような、細かいニュアンスは分析できない状態です。そのため、家の中で体調が悪くなったことを知らせるような見守りシステムにさらに活用できるよう、技術を高めていきたいと考えています」と語った。

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