menu
コンシューマー [ Consumer ]

JavaScript環境でIoT機器を開発する

今後の大きなビジネスチャンスと言われているIoT市場。しかし、IoT機器を開発するためには、ハードウェアを開発するプログラミング知識が必要であり、市場参入へのハードルは決して低くはなかった。Marvell Technology Group Ltd.が開発したKinoma Createは、JavaScriptでIoT機器を開発できるプラットフォームであり、スタートアップ企業がIoT市場へ参入しやすくなる製品だ。

[2016.05.25]

JavaScript環境で機器開発を行える


 デバイスをコントロールしたり、センサーからデータを収集したりするIoT機器は、これまで人が能動的に行ってきた作業の手間を軽減してくれる。例えば、農園の温度や湿度のデータをセンサーデバイスで収集することで、農家の負担を抑えられるだろう。しかしこのようなIoT環境を構築するには、相応の技術力や企業からのバックアップが必要となる。コンシューマーユーザーがIoT機器を活用して、家庭内の電源管理負担を低減したいと考えても、なかなか実現できないのが実情だった。また、スタートアップ企業がIoT市場に参入しようとした場合でも、プロトタイプ製品の開発から製品化に至るまでの期間が長期にわたっていたり、ハードウェア開発の知識がないため、市場参入に二の足を踏むことになっていた。


 米国の半導体メーカーのMarvell Technology Group Ltd.は、上記のようなIoT機器開発の課題を解決できる製品「Kinoma Create」を開発した。日本ではスイッチサイエンスが販売契約を締結し、昨年の12月26日から販売を開始している。


 Kinoma Createは、JavaScriptでIoT機器を開発できるプラットフォームだ。ホワイトとライトグリーンを組み合わせた筐体に、JavaScriptを実行できる環境とタッチ操作に対応したカラー液晶モニターを搭載している。前面と背面に開閉可能なカバーがあり、開くと多様なセンサーモジュールを接続できるコネクターが現れる。スピーカーやマイクは標準で搭載されている。無線LANにも対応しており、Wi-Fi環境においてファームウェアのアップデートなども行える。ハードウェアとして必要な要素を詰め込んだ製品だ。


スタートアップ企業がプロトタイプ製品を開発できる


 Marvell Technology Group Ltd.でKinoma Createの開発を担当したエンジニアの 鈴木バスケ氏は、製品の特長を次のように語る。「競合他社製品にも、IoT機器を開発できるマイコンボードなどはあります。しかし筐体にボードが組み込まれていて、操作用のモニターを搭載している製品は、あまりないでしょう。また、Webアプリケーションの開発に利用されるJavaScriptによって開発が行えるのはユーザーにとって大きな利点です。例えば平日は本業を持っていて、趣味でプログラミングを行うようなユーザーが、土日にIoT機器を開発することもできるのです。Kinoma Createのホームページには幅広いサンプルプログラムや、詳細なユーザーガイドが公開されているため、開発に対するハードルが低いのも特長です」


 ソフトウェアの開発はPC用の統合開発環境「Kinoma Studio」で行う。JavaScript以外にはXMLのコードも利用できる。Kinoma Studioで作成したソフトウェアはKinoma Createで動作するほか、スマートフォンやPCにも対応する。例えばKinoma CreateでLED電球をコントロールできるように開発を行えば、同一のソフトウェアをスマートフォンのインストールすることで、Kinoma Createと同様にLED電球を操作できるようになる。Kinoma Studioでは、物理センサーを接続した際にどのように動作するのかシミュレートする機能も搭載されている。実際にハードウェアにセンサーを接続して、試行錯誤しながら動作を検証する必要がないため、効率的に開発を進められるのだ。


 バスケ氏は「このように簡単に開発が進められるので、IoT機器のプロトタイプを制作する用途に最適です。バッテリーも搭載していますので、開発した製品をプレゼンする際にデモ機として使用できます。例えばIoT市場に参入しようと考えているスタートアップ企業などが、プロトタイプの製作からデモ機を使用したプレゼンテーションまで、一貫して手がけることが可能になります」と活用用途を語る。日曜大工のような手軽さで開発を行えることから、コンシューマー層も販売ターゲットとしている。「週末の時間だけを使って、趣味で開発を行うようなユーザーの中から、やがて本格的なIoT機器を開発するユーザーも現れると考えています」(バスケ氏)


家庭内の電源管理にKinoma Createを活用


 実際にKinoma Createを利用して、家庭内の電化製品の電源を管理する機器を開発した事例もあるという。バスケ氏は「コンロやヘアアイロンの消し忘れを通知する機器を開発した例があります。外出する前に、出入り口に設置したKinoma Createの画面を確認すると、電源がオンであれば画面が赤く、オフになっていれば画面が青くなるような仕組みです。画面が青くなっていれば安心して出かけられると一目で分かるわけです」とその事例を紹介してくれた。それ以外にも、金魚の水槽監視を行う機器など、Kinoma Createを活用して多様なIoT機器が開発されている。


 日本市場で導入しているユーザーは、コンシューマー層が強いという。Kinoma Createの販売代理店であるスイッチサイエンスの志村真子氏は「現時点でのKinoma Createの販路は、当社のWebサイト上の通信販売のみになります。そのためコンシューマー層のユーザーが主力であると見ていますが、個人事業主のユーザーが購入してプロトタイピング用途として利用している可能性もあります。また、当社では大学の生協などの教育分野にも販路があります。最近ではKinoma Createの注文を生協から受けるケースがあり、今後は取引のある生協を通じて、大学の研究室などに導入を広げていきたいと考えています」と語った。一部の学校現場では、授業にプログラミングを取り入れる動きなどもある。JavaScriptで開発できるKinoma Createはそうした情報教育の教材として活用される可能も考えられるだろう。


 Kinoma Createの今後の展開についてバスケ氏は次のように語った。「まずは認知度を上げていきたいと考えています。ワークショップを開催して開発者同士のコミュニティを作るなど、ユーザーに対しての支援も行っていきます。また、最近Kinoma CreateのOSの部分がオープンソースとなりました。オープンソース環境で使ってもらうことで、ハードウェア開発で主に使用されるCコードで開発する部分に、ユーザーが手を加えることができます。これにより、Webアプリケーション開発者やコンシューマー層だけでなく、これまでハードウェア開発を行っていた企業のユーザー層も取り込めます。今後はJavaScriptとCコードの両面から開発が行えるハイブリッド感を市場に伝えていきたいと考えています」


 手軽なIoT機器開発が行えるKinoma Createは、今後のIoT市場を大きく盛り上げる製品として成長が期待できるだろう。

キーワードから記事を探す

IoT