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快適な仮想デスクトップ環境の構築は ストレージの入出力最適化がキモに

高度技術者・先導的人材の育成を目的として、学部・大学院の一貫教育や長期実務訓練など特色ある教育方針を実践している豊橋技術科学大学は、情報システムにおいてセキュリティとコンプライアンスの強化という課題を抱えていた。これらの課題を解決するために同大学が採用したのが、事務システムの仮想化だった。

[2016.03.26]

目的はセキュリティ強化と運用省力化
仮想PC方式のシンクライアントを導入


  高等専門学校からの学生を主な受入対象とし、大半の学生が修士課程に進学するという豊橋技術科学大学は、大学院に重点を置いた実践的、創造的かつ指導的技術者・研究者の育成を行っている。学部1、2年次及び高等専門学校において一定の技術教育を受けた学生に対して、3年次以降でより高度な基礎・専門を繰り返して教育していく「らせん型教育」の実践が、同大学の大きな特色だ。必修となるインターンシップも含めて、高度で実践的な技術力を備えた人材を輩出している。


  2009年当時、豊橋技術科学大学が、運用する情報システムの課題として認識していたのは、セキュリティとコンプライアンス面のリスクだった。学生の個人情報が保存されたUSBメモリーやPCの紛失・盗難事件が発生する中で、企業と同様、大学においても、個人情報の漏洩事件が大きな問題となっていたからだ。同大学 情報メディア基盤センター 准教授の土屋雅稔氏は、次のように話す。「大学は開かれた場なので、誰もが構内や建物内に入ることができます。PCが設置された事務室なども同様です。そうした状況を利用して、例えば業者を装って大学内に侵入し、ものを盗むといった事件が実際に発生しています。貴重な情報が保存されたPCが盗まれるリスクは、人の出入りを管理できる企業と比較すると非常に高いのです」


  また、当時、同大学には情報システム担当者が二人しかいなかったため、システムの運用負担の軽減も喫緊の課題だった。「実質、実動が一人の状況で、300台弱のPCを管理していました。負担が非常に重かったのです」(土屋氏)
そこで同大学では、セキュリティ対策と運用負荷軽減という側面から情報システムの見直しを計画。検討の結果、選択されたのが仮想PC型のシンクライアントシステムだった。その理由について同大学 情報メディア基盤センター 特任助教の中村純哉氏は次のように説明する。「端末にデータを残さないシンクライアントシステムならば、万一端末が盗難にあったとしても、情報漏洩が防げると考えたからです。シンクライアントを実現する手法として仮想PC方式を採用したのは、利用者の利便性とコストを検討した結果です」


リソース不足でフリーズ発生
ストレージIOの見直しで解決


  システム構築のために採用されたのは、VMwareの仮想デスクトップ製品「VMware View(現 VMware Horizon View)」だった。VMware View上でWindows XPの仮想マシン200台を稼働させるために、インテル Xeon プロセッサー X5570 2.93GHz 4コア×2ソケット、メモリー32GBのブレードサーバーを6台導入した。クライアント端末には、1世代前の教育用システムで利用していたPCをUSBブートするように設定して再利用することで、コストを抑えた。


  仮想PC方式のシンクライアントシステムの実現によって、セキュリティとコンプライアンスの強化は実現したが、新たに問題が発生した。Windows XPのサポート終了に伴うWindows 7へのアップグレードによって、リソース不足が顕在化したのだ。「仮想マシンに割り当てたリソースが厳しすぎて、利用者からは『画面がフリーズする』などレスポンスに対する不満が多々寄せられました」と土屋氏は振り返る。
当時のシステム環境では、200台の仮想マシンが同時に稼働した場合、1台の仮想マシンに対してCPUは0.24コア、メモリーは0.96GB。2011年に各サーバーのメモリーを32GBから48GBに増設したが、リソース不足はほとんど改善されなかった。「さまざまな側面を考慮した結果、ストレージの入出力がボトルネックになっていたと考えられます」と中村氏は話す。


  こうした反省をもとに、豊橋技術科学大学では、2013年度に実施された情報システム基盤刷新の一部として、事務システムの更新も行った。仮想マシンは250台(Windows 7)になった。仮想化ソフトは前回と同じVMware Horizon View。仮想マシンを稼働させる基盤として、インテル Xeon プロセッサー E5-2690v2 3.0GHz 10コア×2ソケット、メモリー128GBを搭載したサーバーを8台導入した。これによって、仮想マシン1台へのリソースの割り当ては、CPUがハイパースレッディング利用時で約1コア、メモリーは約4GBになった。「朝の授業時、昼休み後の業務再開時など、仮想マシンの利用が集中する時間帯がかならずあるため、物理リソース以上に仮想リソースを割り当てるオーバーコミットは避けました」(土屋氏)


  ただし、最も重視したのはストレージの入出力だ。そのため、ソフト側とハード側が推奨する構成でIOPSを最大限に高める努力をした。それによって、「ようやく、利用者からの不満の声がなくなりました」と中村氏は息をつく。「ストレージの入出力におけるリソースの逼迫状況が明確に把握できるようになれば、サイジングの問題は解決しやすくなるでしょう」と土屋氏は指摘する。


教育用アプリケーションの仮想化で
学生が所有する端末の活用を目指す


  仮想PC方式のシンクライアントシステムの導入によってセキュリティとコンプライアンスの強化を実現した豊橋技術科学大学は、仮想化技術のさらなる活用を構想している。それが、時間と場所にしばられない教育システムの実現だ。2013年度のシステム基盤刷新は、この構想を実現させる準備でもある。


  学生が所有する端末を利用して教育環境を提供しようとするものだが、授業で利用される3D CADソフトなどを学生の端末にすべてインストールさせるのは非現実的だ。そのため、アプリケーションはサーバーサイドに用意しておく必要がある。そこで検討しているのが、教育用アプリケーションの仮想化だ。この方式ならば、必要なときにアプリケーションを利用でき、さらに、利用する端末のCPUやGPUのリソースを活用できるため、サーバー側にかかる負担を抑えられる。


  こうした展望も含めて、豊橋技術科学大学ではこれからも、情報システムの活用改善を図っていくという。

ユーザー概要
豊橋技術科学大学

 

創立
1976年10月1日


所在地
愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1


職員数・学生数
役職員379人・学生2,188人(2014年5月1日時点)


学部・学科
1学部(工学部)5課程・専攻(機械工学系、電気・電子情報工学系、情報・知能工学系、環境・生命工学系、建築・都市システム学系)


仮想化導入目的
セキュリティとコンプライアンスの強化


導入した製品
VMware Horizon View


(左)
国立大学法人 豊橋技術科学大学 情報メディア基盤センター 特任助教 中村純哉氏


(右)
国立大学法人 豊橋技術科学大学 情報メディア基盤センター 准教授 土屋雅稔氏

 

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