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全国初! 掛川市でAIを活用した問い合わせ対応サービスがスタート

[2016.12.07]

自治体の子育て分野における問い合わせ対応にAIを活用
〜川崎市と掛川市で全国初の実証実験がスタート〜

 


さまざまな業界から注目されているAI(人工知能)。いよいよ、自治体業務の分野にも登場してきた。9月6日から9月30日まで三菱総合研究所がヒューマンコンピュータインタラクション開発を行うイナゴと自治体のコンサルティングを行うアスコエパートナーズと共同で、川崎市と掛川市で住民対話型人工知能による「問い合わせ対応サービス『AIスタッフ』(仮称)」の実証実験を行った。自治体がAIを活用した実証実験を行うのは全国初のケース。どのような実証実験だったのか、掛川市の事例を紹介する。

 


自治体業務で利用可能
実用化されたAI技術


自治体がAIを活用した実証実験を行うのは、全国でも初のケースである。実証実験の背景や目的、内容について、三菱総合研究所と神奈川県川崎市、静岡県掛川市は次のように述べている。


●よりよい行政サービスの提供


AIを活用することで新しい形のサービスが提供できる。市民からの問い合わせによるデータの蓄積が進むことで、データに基づいた政策決定など行政運営の高度化が図れる。


●市民の難しいニーズに応えていく


従来は、子育てや介護など独立した分野でそれぞれの対象者にサービスを提供していたが、高齢者介護と子育てを同時にしなければいけない(ダブルケア)ケースも増えている。行政に対する期待や提供するサービス、提供の仕方についても新たなニーズが出てきている。


●コストの削減


行政では、使える金も人も限られている。少ない予算と人員によるサービス提供が求められる。多くの自治体では財政難から職員の増員は難しく、退職するベテラン職員のノウハウの引継ぎなども課題になっている。AIを導入することで、業務の効率化を図り、タイムリーできめ細やかなサービスが提供できるようになる。


●AIの技術が実用化レベルになった


民間では、AIを顧客対応業務で活用する動きが目立っているように、AIやロボットなどの技術が実用化できるレベルになっている。


実証実験は、人口規模の異なる川崎市と掛川市の二つの市で同時に実施された。AI活用に対して積極的に取り組みを考えていた自治体であったことと、人口規模が違う二つの市で実験をしてみたいということで、政令市である川崎市と人口規模10万人の掛川市に協力を依頼することになったという。


例えば掛川市は、「こども政策課」を設け、子育てに関する相談体制と情報発信の充実を目指し、2014年7月から「子育てコンシェルジュ事業」を展開してきた。保育士資格を持つ5人の非常勤職員をコンシェルジュとして配置。コンシェルジュは、交代で市役所に常駐するほか、1歳児などの家庭を訪問して子育ての助言を行っている。


年間360件ほどの相談が寄せられているが、子連れでの来庁が難しかったり、敷居の高さを感じて二の足を踏んだりする親も少なくない。そこで市は今年、新たに子育てに関する総合案内Webサイト「かけっこ」を開設した。就園前の子どもがいる家庭を主なターゲットに、さまざまな情報の紹介を通じて子育てを支援するというものだ。「子育てコンシェルジュ事業と連動させ、Webサイトを活用してもらうことで、小さな疑問でも気軽に相談してもらえる環境づくりを進めたい」(静岡県 掛川市子ども政策課)という。


今回の実証実験に用いられた具体的な質問や回答なども、コンシェルジュ事業の蓄積データの中から提供されたという。

 


自治体の1日の業務の半分は
電話や窓口での問い合わせ対応


二つの市における実証実験は、子育てに関する問い合わせ対応支援業務を中心に行われたが、なぜ問い合わせ対応なのか。


三菱総合研究所が別の自治体で行った調査によると、1日の業務のうち、約半分以上が電話や窓口での問い合わせ対応に費やしているという結果があった。住民のニーズが高いため、職員の負担も大きい。そこで、まずは問い合わせ対応から解決しようということになったという。


実証実験が行われた問い合わせ対応サービスのAIスタッフ(仮称)は、専用のWebサイトで子育て分野に関する制度情報などを検索する際に、AIが対話形式で知りたい情報に導いてくれる。


自治体の情報はWebサイト上に公開されているとはいえ、どこを探したらいいかわからない、求める情報にすぐ行き着けるかどうかわからないと感じる市民が多い。「特に、子育て関連の情報は健康、子育て、幼稚園…などと幅が広く、複雑化した分野です。窓口に来たとしても、結果的にあちこち回らなければならなくなってしまったりします。AIの技術を活用して、うまく知りたい情報に辿り着けるようにしたいですね」(静岡県 掛川市 IT政策課 戸塚芳之氏)


AIスタッフは、対話形式になっているのが特長だ。例えば、時間外保育のサービスについて、「何時まで利用できるか」「利用方法」などよくある質問の候補を選ぶと、そのサービスの概要が紹介される。AIスタッフのために新たに作ったホームページから情報を抽出し、該当する部分が会話として表示されるのだ。詳しく知りたい人は、「休日保育のページをごらんください」というリンクをたどっていくと、休日保育のページが表示されるのだ。


さらに、市内のどの保育園でサービスが提供されているか、利用するにはどうしたらいいかなどの利用条件も紹介される。そしてもっと詳しく知りたい人は、「市が提供している市のホームページに行けば、より詳しい情報が見れますよ」といった流れになる。AIスタッフで採用されているAIは、問い合わせ内容の認識と最適な答えを見つけられるが、回答文は作れない。そのため、あらかじめ回答を用意しなければいけない。AIスタッフは、子育て分野への利用に限っているため、よくある問い合わせリストから250ほどの回答を作っているという。

 


2017年4月にサービス化を予定
クラウドの利用で全国展開も検討


実証実験の開始にあたっては、行政の窓口や幼稚園など関係機関に5,000部のチラシを配布して告知した。どれだけの問い合わせがあったのか、どんな問い合わせが多かったのかは公開されておらず、三菱総合研究所がまとめているところだ。三菱総合研究所は、市民や職員に利用してもらい、アンケートやヒアリングによる意見で、AIスタッフに対するニーズなどを把握して今後の事業化検討の参考とするという。
「問い合わせの内容は、人によってレベルの違いがあります。用意した回答集で間に合ったのか、問い合わせに寄り添った答えになったのか、AIの回答に対する満足度をもとに回答の精度を高める必要があります。役所の業務のすべてがAIに代わるとは言いませんが、この実験をもとに、全国展開できるようなサービスに発展していくといいですね」(戸塚氏)


AIスタッフは、2017年4月を目標にサービス化が検討されている。、また、低価格でサービスを提供できるよう、クラウドでの展開を予定している。

AIスタッフは対話形式で質問に回答する。問い合わせ内容の認識と最適な答えを見つけられるが回答文は作れないため、あらかじめ250ほどの回答が用意されている。

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