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リクナビNEXT編集長がHRテック市場を解説

[2016.11.03]

Human Resourse Technology

 

HRテック― ヒトと組織のIT化提案


クラウドやAIと人事データを組み合わせて戦略的な人材活用を実現する「HRテック」に注目が集まっている。労働人口減少時代を迎えた国内では、すでに人材獲得競争が激化しているが、そうした中で、企業の成長に欠かせない人材をどう確保していくか。その答えがHRテックの活用となる。

 

 

市場解説


人材争奪戦が始まっている


最新のテクノロジーを活用して人材管理業務の効率化などを実現するHRテック(Human Resource Technology)市場が国内でも盛り上がりを見せ始めている。すでに米国などの海外ではベンチャー企業も含めて多くのベンダーが市場に参入している分野ではあるが、ようやく国内においてもHRテック関連のサービスが提供され始めて、注目が集まりだした。今年の9月には、日本マイクロソフトとリクルートキャリアが共同でHRテックの新ソリューションを開発すると発表している。


HRテックが求められる背景には、人材の採用や活用が困難になってきている状況がある。リクルートキャリアが提供する社会人のための転職サイト「リクナビNEXT」の編集長を務める藤井 薫氏は、社会、経済の観点から次のように分析する。


 「社会的な観点では、日本は15歳〜64歳までの労働人口が減少する時代に突入しています。構造的な人材不足に陥っているのですね。さらに需給バランスも変化していて、ここ2、3年求人倍率は上昇し続けています。人材争奪戦、獲得競争が始まっているのです」藤井氏が指摘するように、総務省が発表した推計によれば(2012年1月時点)、2015年から2020年にかけて労働人口は約340万人減少し、さらに2030年までには2015年比で900万人近い減少が予測されており、その後も減り続ける。


 「経済の視点では、国内経済がサービス業中心になっている点が挙げられます。現在はGDPシェアの約7割がサービス業です。つまりサービス業に従事する人が増えているのです。ただしサービス業は、“もの”ではなく“こと”を提供しますが、ことを形にできる人材の募集や育成が従来の環境では難しいのですね。言葉での表現が困難ですから」(藤井氏)


実際、内閣府の資料(2014年4月時点)によると、サービス産業は国内の雇用の約7割を占めている。製造業従事者の中でも、サービス業的職業の割合が増えているという。そして、この傾向は日本だけでなく海外でも同様だ。米国などではサービス産業のシェアが約8割近い。HRテック市場が一足先に拡大しているのは、こうした背景もあるのだろう。

 


ITの活用でエビデンスベースのHRMに


社会、経済状況が変化する中で、テクノロジーは飛躍的に進化している。藤井氏は、「テクノロジーの側面では、データの収集・加工におけるコストの低下が著しく、HRM(Human Resource Management)関連での活用の可能性が拡大しています。マーケティングの世界では当たり前になってきたことが、いよいよHRの分野でも始まっているのですね」と話す。膨大なコンピューターリソースを低価格で活用できるクラウドは、HRMでも利用しない手はない。


それでは最新テクノロジーによってHRMはどのように変わるのだろうか。具体的な例としては、HR関連のデータ収集・分析によるエビデンスベースのHRM(Evidenced-Based HRM)の実現がある。「Evidenced-Based HRMでは、データを可視化して、採用や配置などを最適化できます。根拠が可視化されるため、意思決定の自信になったり、個人の納得を前提にした人事が可能になるのです」(藤井氏)


こうしたエビデンスベースのHRMは、働く環境が多彩になってきた企業における人材マネジメントにも貢献する。「現在はグローバル化が進み、拠点が世界に展開しているケースも少なくありません。また、ダイバーシティという側面から時間や場所を制限しない柔軟な働き方の導入も促進されています。在宅勤務なども広がっていますね。ただし、働き方が多様化した環境では従来の人材管理が通用しなくなってきています。そうした状況では、テクノロジーを活用したHRMが必要になるのです」

 


AIが人材管理における最適解を提示


HRテックのキーワードとして「AIの活用」も注目されている。HRの領域ではどのような効果があるのか。藤井氏は次のように解説する。


 「AIが採用における新しいパターンを発見するようなケースが考えられます。企業と応募者のミスマッチや人事と現場における人材要件の認識相違をAIが解決し、より適した人材の選定、マッチングを実現できるようになるのです。例えば、リクルートエージェントでは、機械学習を用いた『CAST』というツールを提供しています。これは顧客企業に最適な候補者をデータベースの中からピックアップしてレコメンドするツールです。従来までの人手による仲介では候補としてレコメンドしなかったような人物が提案できるようになっていて、大きな成果をあげています。サービス開始からまだ1年も経っていないのですが、すでに5,000社以上が活用しています」(藤井氏)


クラウドサービスやAIを活用するHRテックは、人材管理業務におけるテクノロジーの比重を高めるが、最終的には「人を中心とするHRテックにしていかなければなりません」と藤井氏は指摘する。AIは最適解を提供するかもしれないが、それが従業員や企業側における納得解にはならないかもしれないからだ。「ある有業員のキャリア形成には海外支店への異動が最適だとAIが判断したとして、それを即座に従業員が納得するとは限りません。そこは上司などが介在してフォローする必要があります」と藤井氏は補足する。テクノロジーを活用すれば、よりよい人材管理が可能になるが、中心はあくまでも人であるという視点を忘れてはならないようだ。


それでは次回からベンダーが提供する具体的なサービスを紹介しよう。

「テクノロジーを活用してエビデンスベースに!」

 

リクルートキャリア
リクナビNEXT編集長
藤井 薫 氏

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