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【過去記事セレクション】デジタルサイネージを活用して 災害時でも情報を発信 -港区が新たな情報発信システムを構築-

東京都港区は、区内に設置されているデジタルサイネージを活用して、区民や在勤者などに平常時には行政サービスなどの情報を発信し、災害時には、避難所開 設の状況や被災情報などを発信する新たな情報発信システムの構築を進めている。情報伝達のメディアとして脚光を浴びているデジタルサイネージ。本稿ではそ の可能性と、港区のデジタルサイネージ活用の状況、これからの課題について触れてみる。text by 古俣慎吾

 

※紙媒体【PC-Webzine】に掲載されたコンテンツの中で特に人気の高かったコンテンツを再掲載しています。本記事は2015年11月号に掲載された記事です。記載内容は掲載当時のものになりますのでご了承下さい。

【上の写真】港区はコカ・コーライーストジャパンとの連携によって、電子ペーパーサイネージ付き自動販売機による情報発信の実証実験を行っている(編集部注:2015年当時)。

[2016.09.01]

災害発生時には 被害情報や安否情報を伝える

 

デジタルサイネージは時間と場所に応じて「いつでも、どこでも、誰にでも」情報提供ができるという特性を 持っているため、多くの人が集まる場所、他に適切な情報提供手段がない場合などに有効に機能する手段として注目されている。例えば、ホテルのコンシェル ジェのような案内&相談ツールや駅や空港での案内板、金融機関店内での株価情報の表示、 食品の値段をスーパーの画面で告知、学校や病院での情報共有ツール、企業内の連絡ツール、さらに街の空間アートとして景観を向上させ、公共空間で緊急情報 を流すなど公的な利用も進んでいる。

 

「デジタルサイネージコンソーシアム」(2007年に結成。デジタルサイネージのメディア化のために必 要な標準化を行う一般社団法人)は、新たな市場を開拓するための運用ガイドラインを作成。その中で、東日本大震災時には、デジタルサイネージが災害情報を 配信して公共的な役割の重要性が確認されたことを受け、災害発生時には可能な範囲で災害情報、被害情報を伝えること、一定期間を過ぎた場合も、安否情報、 交通機関の運行状況、生活関連情報を提供するよう提案している(サイネージ事業者が、個々の状況に応じて検討することを前提としている)。港区のデジタル サイネージを活用した情報発信、コカ・コーライーストジャパンとの連携は、このような背景から生まれてきたものと言える。

▲配信される情報は、日本語のみならず英語、中国語などに対応している。

 

職員提案制度がきっかけで 情報配信サービスがスタート

 

これまで港区は、ホームページをはじめ広報紙や広報番組、電子メール、Twitter、Facebook など、さまざまなメディアを活用して、区民に情報を発信してきた。これらの情報発信は、情報を必要とする方に情報を探しにきてもらう「プル型」の情報発信 がメインだった。しかし、子育て中で忙しく情報検索をする時間のない人や、ホームページやSNSを活用できない高齢者など、区が発信する情報を入手しにく い環境の人も多くいる。日常生活の中には、役所の窓口での待ち時間やバスの乗車時間など、まちなかに滞留している時間も多くある。

 

「港区としては、区民の皆さんに身近な場所で、区のイベントやサービスを効率的にお知らせできるよう、新 たな情報発信の仕組みを構築することになりました。区内の施設などに設置されているデジタルサイネージを活用して、区民や在勤者、観光客に対して、身近な 場所で区のイベントやサービスの情報を効率的に発信する。平常時には行政サービスなどの情報を発信し、災害時には、避難所開設の状況や被災情報などをリア ルタイムに発信するというものです」(港区企画経営部区長室 広報係長 竹村多賀子氏)

 

今回の取り組みは「順番を待っている来庁者に、たくさんある区政情報・サービスを効率的に届けることは できないか…」と考えた職員が「職員提案制度」に事業提案したことをきっかけにスタートしたという(職員提案制度とは、職員自らが地域や職場で抱える課題 を解決するために、職員自らの発想で新たな事業を創造し、提案する制度)。

 

取り組みの主な特徴は次の3点である。

 

1.さまざまな情報発信システムとの連携

区のホームページや防災情報メール、区議会中継サービス等、複数の情報発信システムと連携。平常時はもちろん、災害時における情報発信の省力化を実現した。これは全国初の試みである。

 

2.「電子ペーパーサイネージ」を採用

超省電力型なので、電力供給がストップした状況でも情報発信できる。

 

3.民間事業者との連携

駅前や商業施設に大型サイネージを設置している事業者との連携・協力を視野に、効率的で効果的な情報発信をめざす。

▲港区の区役所に設置されているデジタルサイネージは、Wサイネージという液晶と電子ペーパーの一体型サイネージ。緊急時に配信される情報画面には、平常時に配信される情報に加えてL字型に緊急情報を入れて配信される。

▲上:平常の配信画面。下:緊急情報が表示された配信画面。

身近な場所で 災害時の情報が入手できる

 

港区は9月1日(※編集部注:2015年)、コカ・コーライーストジャパンと「電子ペーパーサイネージ付き自動販売機による情報発信 の実証実験」に関する協定を締結した。港区が新たに構築した「港区デジタルサイネージコンテンツ配信システム」と連携した電子ペーパーサイネージ付きの自 動販売機を区立公園や児童遊園、区有施設等に設置し、効果的な情報発信に関する実証実験を行うというもの。

 

コカ・コーライーストジャパンとは、以前から連携協力の提案をしてもらって検討を進め、新しい技術を活 用して、平常時だけでなく災害時にも効果がある情報発信環境を整備することができたという。電子ペーパーサイネージは、電子書籍等で使われている端末と同 様の表示形式機能を持つ超省電力型のデジタルサイネージのこと。カラー表示はできないが、電力供給が停止した状態でも72時間程度、情報発信を継続でき る。

 

この事業の内容は、

 

1.平常時は、区からのお知らせや施設の利用案内など役立つ情報を配信

 

2.災害時・緊急時には、緊急情報配信システムと連動した地震や大雨、光化学スモッグなどの防災情報、不審者等に関する安全・安心情報などを配信

 

3.災害時には、区民や帰宅困難者等に自動販売機内に格納している飲料水を無償提供する。1基あたりの格納数は最大252本(500ml。250ml=595本)。無償提供するための鍵(ID)は区が管理し、通信により飲料水を提供

 

4.コカ・コーライーストジャパンによる地域貢献として実施するため、区の経費、負担なしに、区内各所に災害対策仕様のデジタルサイネージを設置

 

5.設置候補地…区民や帰宅困難者への情報提供に有効な場所を選定し配置する(区立公園・児童遊園、区役所・総合支所・保健所・区民センター等)

 

協定に基づき、9月1日(※編集部注:2015年)から、配信システム及び通信環境との連携、電子ペーパーサイネージの視認性、耐 久性等に関する実証実験が行われた。現在、本格実施にむけ検討が進められており、11月には本格実施に伴う協定を締結。順次、事業を拡大し、2020年の 東京オリンピック・パラリンピックや災害時の情報発信力強化のため、さまざまな事業者に、本事業への協力をお願いしていくという。地震発生時に、まちなか のビルの大型サイネージからリアルタイムの災害情報が発信される…これほど心強く感じるものはないのではないだろうか。

 

(PC-Webzine2015年11月号掲載記事から転載)

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