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健康管理の重要なポイント、「未病」とは? 神奈川県の「マイME-BYOカルテ」【IT NEWS of Local Government】

[2016.07.05]

健康状態を可視化する「マイME-BYOカルテ」をスタート
〜神奈川県民の簡単・安心・便利なヘルスケアを実現する〜


神奈川県は2016年3月から、PCやスマートフォンを通じて自身の健康情報や未病の状態が一覧できる「マイME-BYO(みびょう)カルテ」の運用を開始した。同県ではICTを活用して個人や患者のヘルスケアを実現し「健康・安心・幸福」が持続する社会を目指している。そして、県民や医療機関、企業などが電子カルテ、治験・投薬データなどの健康・医療情報を活用できるシステムの構築に取り組んでいる。その一つが、健康管理が簡単、安心、便利にできるアプリ「マイME-BYOカルテ」である。

 


医学用語として一般化した「未病」
個人カルテで健康状態を見える化


未病とは、もともとは東洋医学の文言で、読んで字のごとく「未ダ病ニナラザル」状態。日本未病研究学会では「健康状態の範囲であるが、病気に著しく近い身体または心の状態」と定義づけている。つまり、自覚症状も他覚症状もなく、一応健康ではあるが、病気に近い健康状態ということだ。西洋的な考え方から定義づければ、未病管理は積極的な健康管理または予防医学の一分野と考えられ、最近は未病も一般的に使われる医学用語として普及・認識されてきているという。


 「いわば、その未病の状態を少しでも改善していくために、自分の健康状態を見える化しようというのが、このシステムの観点です」と話すのは、神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室の坂本豪朗氏だ。坂本氏は、健康寿命日本一と新たな市場・産業の創出を目指すヘルスケア・ニューフロンティア推進部室のヘルスケアICTグループで、個人や患者の未病を見える化するアプリの実証実験を行っている。


神奈川県では、超高齢社会を乗り越えるため「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」に取り組んでおり、その基盤として六つのシステムの構築を進めている。個人の健康や医療に関する情報を収集・蓄積するプラットフォームを作り、個人での活用や、県が災害時での利用、さらにはビッグデータとして活用しようというのだ。


 「マイME-BYOカルテ」は、このプラットフォームを活用したアプリであり、個人はこれを利用して自分の心身の状態を把握して、自主的に健康管理ができる。このマイME-BYOカルテに先立つシステムとして「お薬情報の見える化」ができる「かながわマイカルテ」があったが、これを薬の情報だけでなく個人の健康情報やデータを拡充・発展させたものが、マイME-BYOカルテというわけだ。

「マイME-BYOカルテ」

マイME-BYOカルテに民間のアプリが連携
スマホで自身の健康情報をどこでも一覧できる


マイME-BYOカルテでは、身長・体重・血圧などのデータの他に、アレルギーの有無、病歴・薬歴、薬の副作用の記録、ワクチン接種の記録、日々の生活記録などをクラウドコンピューティングで登録し、閲覧できる。また、自分で入力したデータのほかに、民間企業が提供する健康管理・薬剤管理用アプリのデータもスマホなどで、どこでも参照・閲覧できる。


現在、実証事業で対応しているアプリは、エムティーアイの活動量計や体組成計との連携アプリ「CARADA(からだ)」、日本調剤のお薬手帳アプリ「お薬手帳プラス」(日本調剤)とグッドサイクルシステム「ファルモお薬手帳」の三種類だ。


CARADAは、活動量計や体組成計などの機器と通信で連携できる健康管理のアプリ。登録した歩数や体重などをマイME-BYOカルテにバックアップし、自動的に表示する。アプリを通じて栄養士による食生活のアドバイスを受けることもできる。


お薬手帳プラスは、日本調剤の薬局で調剤された薬が自動的に登録される電子お薬手帳アプリ。このアプリで登録した薬の情報をマイME-BYOカルテにバックアップし、表示できる。


ファルモお薬手帳は、薬局で発行されるQRコードを読み込むことで、お薬情報が登録できる電子お薬手帳アプリ。登録したお薬情報をマイME-BYOカルテにバックアップし、表示できる。アレルギー情報や予防接種情報も登録できる。


 「カルテでは、自分のデータだけでなく民間企業が提供するアプリも利用できるよう、2016年1月から募集を開始しました。3社のアプリ参加を得て2016年3月にマイME-BYOカルテをスタートしましたが、実情はプロトタイプ(試用版)の作成中というところです。ほとんどのデータは手で入力する状況なので、なんとか自動化して入力できるような仕組みを構築したいですね。実証実験の結果を検討した上で、どのような展開をしていこうか考えている段階です」(坂本氏)

マイME-BYOカルテの連携アプリ追加ページでは、アプリの連携状態がわかる。現在「CARADA」アプリと連携中。
※CARADAと連携して活動量のデータを取得する場合は、専用の活動量計が必要。
    今後、スマートフォンから取得した歩数データと連携できるように修正予定。

利用者数の目標は1年後1万人
市町村や病院との連携が求められる


神奈川県は、「かながわグランドデザイン 第二期実施計画」の中でマイME-BYOカルテの累計利用者数を2017年3月までに1万人、2019年3月には50万人に増やすという高い目標を掲げている。目標の達成に向けては、未病産業研究会やCHO(健康管理最高責任者)構想推進コンソーシアムに加入している企業や団体、商工会議所や経営者団体等に利用を呼びかけていく。また、市町村と連携しながら、さまざまな媒体を活用して県民に事業の意義や効果を理解してもらえるよう広報活動を展開し、利用の拡大を図っていくという。


今回の実証実験に当たっては、マスコミ媒体は使わなかったが、県のホームページや公共交通機関などでのポスターやチラシの配布、イベントなどを通じて県民にPRしたという。


スタートして3カ月の6月初旬の時点で、利用者は約3,000人。ただし、アプリの実証実験の当初から参加したのか、3月以降に県のホームページからカルテをダウンロードして参加したのか、年代別、男女別などのデータも詳しく判断する機能は持っていないという。


 「プロトタイプを平時に使うときにどう利便性を高められるかという部分に、膨大な課題があります。そのため、必要性の高いところから改善していくことになります。利用者の方からは、『これを機会に健康に気をつけるようになった』といったポジティブな声は聞こえてきますが、使用した結果についてはまだ把握できていません。今後もいろいろと実証実験を重ねてアプリを増やしたり、市町村や病院や薬局とどう連携したりしていくのかが次の課題になるのではないでしょうか」と坂本氏。


神奈川県は6月の補正予算にヘルスケアICTシステムのプロトタイプの構築として1億6,000万円を計上している。今回の取り組みへの意気込みが見てとれる。これまで自治体の取り組みとしては、病院の電子カルテなどと連携した健康管理システムの例はあったが、個人に着目して対して健康情報を大規模に蓄積し、展開していこうという事例は初めてだ。今後、利用者の増加やシステムの展開に伴い、多額の予算を投じることになることも想定される。相応の効果が期待できるのか、目標通りに利用者を増やせるのか、先進の事例として運営や広報の仕組みを考えていってほしい。

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