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サーバー同士で情報を共有する災害に強い通信網を構築 〜長野県塩尻市のメッシュ型地域ネットワーク〜 【IT NEWS of Local Government】

長野県塩尻市では、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)の「メッシュ型地域ネットワークのプラットフォーム技術の研究開発」が進められている。これは、地震などの災害によりインターネットが使用できない事態に備えて、無線システムでネットワークを構成するものだ。塩尻市の実証実験の模様を紹介する。

[2016.04.06]

地震などの災害に備えた
無線によるネットワークを構築


 メッシュ型地域ネットワーク(以下NerveNet=ナーブネット)では、市役所や市民交流センター(えんぱーく)など市内の数カ所に無線基地局を設置し、市観光案内所、塩尻協立病院、北小野支所、情報プラザなどにデジタルサイネージを置く。このシステムの特長は、通信障害が発生して無線基地局とクラウドサーバー間の回線が切断しても、各無線基地局に設置されている分散サーバーが情報を持っているため無線基地局同士で情報共有ができることだ。また、無線基地局は網の目のように(メッシュ)接続されているため、スマートフォンなどの端末から別の無線基地局のサーバーを経由してクラウドサーバーにアクセスもできる。さらに、自動経路生成機能により、災害や障害でどこかの回線が切断した場合でも別の基地局の分散サーバーからサービス(情報)提供が継続できることだ。災害に強く、セキュリティも強化されたものになっている。


 本システムは、NICTから研究開発を受託した日本ユニシスが塩尻市と共同で実証実験を行っている。今回の委託研究では、災害時はもちろん、平時のネットワーク活用方法を研究開発し、NerveNetが自治体の地域通信ネットワークとして実用化されることを目指している。塩尻市内で平時サービスを対象に、利用者のニーズや課題を解決するためにさまざまな適用方法を試し、NerveNetのプラットフォームとしての汎用的な機能や価値を検証するという。
塩尻市が実証実験の場として選ばれた背景を、塩尻市情報政策課 課長の金子春雄氏(CTO)は、次のように説明する。


 「塩尻市は、日本列島を縦に走る糸魚川〜静岡構造線という断層帯の真ん中に位置します。約1,000年おきにM8程度の地震が発生してきたといわれ、2011年の東日本大震災の後にも6月に震度5強の地震が起きています。塩尻市としては、松本市との境まで130キロにおよぶ光ファイバーを敷設していますが、大地震の際にはこれが切断される可能性もあります。そうした事態に備えて、無線によるネットワークの構築も必要だと考えていたときに、今回の実証実験の話があったのです」


デジタルサイネージに
災害情報を表示する


 塩尻市はこれまで、行政情報や災害情報は市のホームページやメールなどで市民に配信してきた。しかし、災害情報のメール配信では通信会社ごとに入力が必要になるため、市の職員の手間もかかっていた。また、インターネットが切断されると防災無線のみに頼ることになるが、雨が降ると音声が聞こえづらいという課題があった。


 そこで、今回の実験では行政情報や既存の災害情報を一カ所で取り扱い、NerveNetと災害情報一斉配信システムを組み合わせて配信することにした。平時と緊急時の両面から、情報配信の質や量の向上を図ることになったのだ。


 例えば平常時は、市からのお知らせや観光情報、天気情報、火災などの防災情報、警察からのお知らせなどが、これまで通りホームページなどを通じて配信される。また、本実験は、それらの情報をデジタルサイネージにも配信されるようにするものだ。デジタルサイネージへの一斉配信によって、子供や高齢者の見守りにも活用できる。これらの情報やサービスが、緊急時や災害時のインターネットが利用できない場合でも提供可能となった。無線基地局同士が網の目のようにつながっているため、どこかの無線基地局の分散サーバーとクラウドサーバーとの回線が切れても、別の無線基地局の分散サーバーから情報やサービスが提供される。平時のサービスでは、2016年度から地域循環バスの位置情報を各施設のデジタルサイネージに表示し、利便性の向上を図る実験を行う予定だ。


平時のデジタルサイネージへの配信
目指すのは人が関与しない仕組み


 市民たちは、2015年の夏から始まったこの実験をどのように受け止めているのだろうか。金子氏が語る。
「市民へのアピールは数回行っています。まず2015年7月25日に開催された『塩尻玄蕃まつり』の際には、市民交流センターでデジタルサイネージを使った観光名所などの情報配信を行いました。同年10月31日に開催された『ハッピーハロウィーンinしおじり2015』でも、市民交流センターでデジタルサイネージのデモンストレーションを行いました。その度にアンケートを実施しましたが、音声は聞き損じることがあるが、文字なら複数回表示されるので見逃すことがない、など『おおむね良好』という評価をいただきました。地域循環バスの位置情報については、現在、地図がわかりやすいか、テキストの方がいいのか検討している最中です」


 今回の実験は、利用者のニーズや課題を解決し、緊急時にきちんと稼働するシステムを構築するための実験である。システムが導入できれば、職員の手間を省くことにつながるのだが、細かいところまでつくり込もうとすると人手や手間がかかるという矛盾にぶつかっているという。


 「現在、平時サービスのサイネージの情報配信において、見る人にとって最適なスケジュールやコンテンツになるよう作成していますが、そうした作業は手間も時間もお金もかかります。それらを改善して、市民が求める情報をデジタルサイネージに自動配信できるようにしていきたいです。実証実験の終了後にネットワークシステムを継続使用するかどうかを決めますが、継続すればかなりきめ細かく、見る人に寄り添ったシステムができるはずです」(金子氏)


島根県松江市でも実証実験を実施
遠隔自治体と連携して課題解決へ


 NerveNetの実証実験は島根県松江市でも行われている。塩尻市と松江市はそれぞれ独立した実証実験だが、NerveNetを接続して情報共有や災害時に備えたデータのバックアップなどの交流を進めていくという。「両市のNerveNetを接続して重要データの相互バックアップや観光情報などの共有、交換などを行っています。両市で共通する課題について協力して解決できる事案に挑戦していきたいです」(金子氏)

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