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障害者の就労支援 ホームページ制作ソフトウェア「ICT治具」ダンウェイ

学校現場のIT活用事例というと、普通学校のタブレット学習などを思い浮かべることが多いだろう。しかし、特別支援学校など、障害を持つ人の学習に利用されるケースもある。ダンウェイは自社が開発したソフトウェアを活用して、障害者の学習や就職を支援している。ソフトの活用によって目指すのは「その人なりの自立」だ。同社の代表取締役を務める高橋氏に、障害者雇用とIT技術の関係性について、話を伺った。

[2016.03.01]

個人の特性に応じてホームページ制作を分業


 児童生徒がIT機器を活用した学習の効果の一つとして期待されているのが、ITリテラシーの向上だ。学習を通じてITスキルを向上させ、そこから情報収集や発信を行えるようになることは、今後21世紀を生きていく子どもたちには必須のスキルと言える。また、このようなITリテラシーの習得は、将来の就職の役に立つ。現状、ビジネスにはITスキルが不可欠であり、社会に出る前にそれらを習得しておくことが必要だ。これは普通学校の児童生徒のみならず、特別支援学校などに所属する児童生徒にも求められるスキルだ。


 障害者の就労を支援するダンウェイは、知的障害者にフォーカスを当てて開発したホームページ制作ソフトウェア「ICT治具」を提供している。本ソフトウェアは、障害者就労支援事業所でもある同社において、障害者の雇用を創出するための重要なツールだ。


 ICT治具は、文字や写真、イラストをパズル感覚でレイアウトすることでホームページの制作が行える。制作したページを保存するボタンは青、削除するボタンは赤で表示するなど、知的障害を持つユーザーでも直感的に操作できるのが特長だ。また、複数人で一つのホームページを制作する分業も行えるため、個人の得意分野を活かした制作が行える。


 同社の代表取締役社長を務め、自身も障害を持つ子供の母親である高橋陽子氏は、ICT治具の開発の経緯を次のように話す。「現在、女性や若者、高齢者などと比較して、障害者の雇用支援は後回しになりがちです。そもそも日本は資源が乏しいという側面があるため、新たな産業を作らなければ障害者の雇用を創出することは難しいと考えました。そこで着目したのが日本の中小企業の多さです。日本の企業の99%が中小企業と言われていますが、中小企業はインターネットを利用した情報発信を苦手としているケースが多いのです。ICT治具は知的障害を持つ人でもホームページの制作を行えるソフトウェアです。本ソフトウェアを利用することで障害者が中小企業のホームページの制作を受託できるようになります。当社では、障害者の就職を実現する上で、障害者の特性の応じた企業マッチングや、ICT治具を活用した職業能力向上トレーニングなどを実施しています。また、情報発信を苦手とする中小企業を対象にホームページ制作の受託を行い、納品と同時にホームページの運用保守を行える障害者をその企業で雇用してもらうことで、継続的な情報発信を障害者の手で実現しています。もちろん、ホームページの運用保守だけではく通常業務も行うことで、付加価値を持った人材として採用してもらっています」


IT機器の操作性をソフトウェアを通して習得


 ICT治具を活用した教育プランの提供も行っている。例えば特別支援学級の生徒に、課外活動のレポートを書かせることは難しい場合が多い。フォーマットが定まっていなかったり、IT機器の操作が分からなかったりするためだ。しかし本ソフトウェアは、専用のテキスト教材に沿ってICT治具の使い方を覚えるため、それを通してIT機器の操作に慣れることができる。また、ICT治具は全体のレイアウトをパズルのように組み立てられるため、写真や文章を挿入する位置をあらかじめ設定しておける。


 実際に、とある中学校の支援学級の生徒は、ICT治具を利用して課外活動のレポートを作成し、文化祭で発表を行った。教員からは「授業を通してPCへの入力が速くなり、PCに向かう姿勢もできた」「自分で打ち込んだテキストが、整ったレイアウトで表示されるのは大きな達成感だと思う。この経験を職業につなげ、活かしてもらうことを期待している」という声があったという。


 ダンウェイによる就職支援においても、ICT治具を通してIT機器の操作性を学ぶ例は数多い。「例えば、履歴書の内容をICT治具を使って書けるようにしたり、タイピングの練習を行ったりしています。ICT治具はWordなどの文書作成ソフトウェアと比較して扱いやすいため、利用している内に自然に操作性が身につき、できることが増えていくというメリットがあります」と高橋氏。例え学んだホームページ制作スキルが、直接の就職先につながらなかったとしても、タイピングスキルや文章を書くスキルはどの企業にも必要とされる。これ以外にも同社ならではの個別サポートによって、昨年の就職実績は実に135%と高い数値を記録している。


 「特に障害者を対象とした場合、個別対応というのは非常に重要です。障害者と一口に言っても、抱えている課題は多種多様で細分化されています。その一人ひとりの課題をもとに、できることできないことを分析した上で、できることを伸ばしていくことが重要だと考えています」と高橋氏。現在このサポートをダンウェイだけでなく、様々な団体が実施できるよう、4月からパートナー制度をスタートさせている。ICT治具を活用した教育の進め方や、それをサポートするインストラクターのスキルをパートナー企業と共有し、より幅広い企業でICT治具を活用した障害者サポートを実現していく方針だ。

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