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学級ごとにOSが異なるタブレットを導入 ~東京都杉並区立天沼小学校~

杉並区天沼小学校では、普通学級にWindowsタブレット、特別支援学級にiPadと、異なる2種類のOSの端末を導入して授業に活用している。OSごとの特性を活かした同校の導入事例を探る。

[2016.04.06]

Windowsを普通学級にiPadを特別支援学級に採用


 杉並区立天沼小学校(以下、天沼小学校)は、2008年に杉並区立杉並第五小学校と杉並区立若杉小学校が統合して誕生した公立小学校だ。杉並区では区立小中学校の普通教室を対象に、電子黒板機能付きプロジェクターの導入を進めるなど教育現場のIT化を図っている。その中でも天沼小学校は、児童1人につき1台のタブレット導入を進めるなど、IT機器を活用した教育に積極的な学校だ。


 天沼小学校で導入しているタブレット端末は、「iPad」(2010年発表モデル)とWindowsタブレットである「VersaPro タイプVT」(2014年発表モデル)の2種類だ。通常、導入するタブレットはWindowsタブレットのみ、iPadのみとOSを統一する学校が多い中、2種類のOSが混在するタブレット活用を行う天沼小学校の導入事例は異例と言える。同校の校長を務める福田晴一氏は、その理由について次のように語る。


 「Windowsは、IDとパスワードで共有して使用できる特性上、マルチユーザによる利用に適した端末です。そのため、導入台数を抑えつつも1人で1台のタブレットを利用できます。教員が使用する校務PCもWindowsであり、またインフラもWindowsベースで設計されていたため、コントロールしやすいことも選定理由の一つです。その半面iPadはパーソナル利用に適した端末です。ボタンを押せば簡単に電源のオンオフができる点や、豊富なアプリケーションから最適なアプリをダウンロードして、自由にカスタマイズできる点などのメリットがあります。そのような理由から、Windowsタブレットは普通学級での利用、iPadは特別支援学級における利用に最適であると判断し、これらの学級ごとに異なるOSの端末を導入しました」


 天沼小学校で目指す教育は「次世代教育」。今後来る超少子高齢化社会では、産業人口が減少し、外国人労働者の増加はもちろんのこと、ITの力を借りることで障害者雇用も増加すると福田氏は考えている。「いまを生きる子供達が大人になったころ、異なる考え方の人たちと一緒に仕事をすることが非常に多くなるでしょう。決まった正解はなく、様々な価値観に基づいてコミュニケーションを取ることが求められます。プレゼンテーションを行ったり考え方をシェアしたりすることに、ITの利活用は欠かせない存在になっていきます。そうした未来に備えて、ITを活用した教育は必要であると考えています」(福田氏)


タブレットで思考を可視化して児童の発表を支援


 天沼小学校では以前から、PC教室の整備や教室で利用する教員用のPC、書画カメラや電子黒板、1グループにつき1台で利用できるタブレット端末などの導入を進めていた。今回の1人1台のタブレット導入は、それらのIT機器の利用に慣れ親しんだ普通学級高学年の児童を対象に2014年9月から実施している。


 「慣れ親しんでいるとはいえ、児童のタブレット操作スキルにはばらつきがありました。そこでキーボード操作やフリック操作などをキャラクターと一緒にトレーニングできるソフトウェア『ポケタッチ』を利用して基本的な操作を学びました。操作に慣れたら、インターネットを利用した調べ学習を行い、その内容を発表する協働学習の機会を増やしていきました。協働学習で頻繁に利用されたのは、カードをつなげるだけでプレゼンテーションが行える『ロイロノート・スクール』です。タブレットを利用しない発表の場合、児童は自分の頭の中だけで発表内容を考えており、教員がその内容を把握することはできませんでした。しかしタブレットを利用することで、それらの思考プロセスが可視化できるようになり、教室の前で発表する際に児童が言葉に詰まっても、内容を把握している教員がスムーズにサポートできるようになったため、児童も安心して発表が行えるようになったと感じています」と福田氏は語る。


iPadによる個別学習への主体的な取り組み


 特別支援学級でも、普通学級と同様に当初はポケタッチを利用した操作習熟を行ったという。しかしその後の活用は異なる。特別支援学級には知的障害を持つ児童が多く、協働学習よりも障害に応じた言葉や数について学ぶ、基礎段階の個別学習が必要とされる。例えばひらがなをなぞる、10までの数を学習するといった学びだ。そのような学習を、障害のレベルに応じたアプリを活用して行ったことで、個人の学力が伸びているという。「iPadを利用すると、児童は従来の学習よりも非常に集中して主体的に取り組みます。そのため学力の伸びも大きくなったのだと考えています。また、iPadのカメラ機能を活用して、自分の好きな場所の写真を撮影してきてもらい、その理由などを書いて発表してもらうような学習も行っています。前述したように、障害者雇用が増える次世代では、このような自分の意思を伝える能力は非常に重要になります。現在は手書きでその場所が好きな理由を記述してもらっていますが、今後はキーボード入力による記述なども行っていきたいと考えています」(福田氏)


 今後、CBT試験などコンピューターを利用した試験が増加していく中、最低限のITスキルは必須だ。科学技術の進化に合わせた教育を行っていかなければ、子供達が将来的に豊かな生活を送ることは難しくなってしまうと福田氏は指摘する。「そのような次世代のスキルを身につけるために、デジタルを活用する教育を進めています。しかしもちろん、デジタルだけでなく体感を伴う授業も必要になると考え、日本の伝統文化である華道や茶道、お琴なども体験させています」と福田氏は続けた。


 学級ごとの特性に合わせたタブレットを導入することで、次世代を生きる児童の能力を育成している天沼小学校。このようなOSごとの特性を活かしたタブレット活用は、販売店が他の学校現場に対して提案する上でも応用できるだろう。

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