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タブレットとデジタルテレビで“堺スタイル”を構築 ~大阪府堺市~

児童1人にタブレット1台を導入する動きが、先進的な学校現場や自治体を中心として進んでいる。タブレットを導入したことで児童が積極的に学習に取り組むようになる事例もあるが、逆にタブレットの使い方を教える授業になってしまい、学力の向上につながらないようなケースも考えられる。堺市では、IT機器を活用することで得られる学習効果を確実なものとするため、市内のすべての小学校の教員全員にWindowsタブレットを導入した。

[2016.04.03]

ノートPCの置き換えにタブレットの導入を検討


 授業にIT機器を導入することで、児童の集中力が高まることはよく知られている。これは、IT機器に対する物珍しさから起こっていることではなく、IT機器を活用することで授業の内容がより伝わりやすくなっているからだ。例えば、紙の教科書のみを使用して授業を進めている場合、開くページを指定しても、すべての児童が同じページを開くまでに時間がかかるケースがある。その場合、電子黒板やプロジェクター、デジタルテレビなどを導入していれば、デジタル教材をデジタルテレビなどに投映させることで、学級の全児童が同じ教材に一斉に注目させられる。IT機器の導入によって、授業のタイムロスを減少させられ、効率的に授業を進められることに加え、児童の集中力も持続するようになるのだ。


 デジタルテレビに教材を投映させるためには、ノートPCなどの端末が必要となる。しかし、教員が授業を進めながらノートPCを操作する場合、いくつかの課題がある。以前、デジタルテレビとノートPCを組み合わせた授業を市内で実施していた、堺市教育委員会 教育センター 情報教育グループ 主任指導主事の浦嘉太郎氏は次のように振り返る。


 「堺市では2009年度から、ノートPCと大型デジタルテレビを組み合わせた授業を行っていました。児童の集中力が高まるなどの効果はありましたが、課題も発生していました。従来の紙の教科書と黒板を使用していた授業スタイルとは違い、ノートPCを活用すると手元のマウスやキーボード操作に意識が集中してしまいます。その場合、並行して児童を指導することが難しく、児童個人が授業の内容を理解しているのか把握することが難しい状態にありました。また、ノートPCとデジタルテレビを連携させるには各種ケーブルで接続する必要があるなど、忙しい教員に余計な負担をかけていた側面もありました。結果的に、これらのIT機器を導入しても、活用は一部にとどまりました。機器の操作と指導を両立出来なかったり、準備に時間がかかったりしたため、授業で効果的に使いこなせる教員が少なかったからです」


 そのような取り組みを行う中、市場にタブレット端末が普及し始めた。近隣の自治体が子供1人に1台のタブレット端末を導入する方針を固めていたこともあり、同市もタブレットを活用した教育の次の方針を検討していた。


 「学校教育は、学習を定着させることを目的としていますが、児童1人が1台のタブレットを所持しても、その学習効果は得られにくいと考えました。タブレットの使い方を教える授業が中心となってしまうと予想したからです。しかし、これまでの授業で利用していた教員用のノートPCを、タブレットに置き換えれば、従来の課題を解決した上で、高い学習効果が得られるのではないかという考えが浮かびました。ノートPCではキーボードやマウス操作、配線の関係で、市内のすべての学校で活用されるには至りませんでしたが、タブレット端末であれば、タッチ操作で直感的に操作が可能になる上に、配線の必要もありません。また、ノートPCの場合は教卓に据え置きした状態で使用する必要があるため、児童のノートを確認して直接指導する机間指導が行えませんでしたが、タブレットであれば手に持って移動できるため、従来の机間指導との融合が可能になります。教員の指導力を向上させて高い教育効果を得るためには、教員1人に1台のタブレット導入が最適である、という結論に達しました」と浦氏は検討の経緯を語った。


導入後の利用率は約半数、スキルを問わずに活用できる


 それらのIT環境を実現するため、同市ではWindowsタブレットを市内の小学校に整備することを決めた。加えて、タブレットから画像や音声のデータをデジタルテレビに直接表示させられる無線LANアクセスポイント、授業支援ソフトウェアを導入し、完全にワイヤレスで授業を進められる環境を整えたという。


 2013年度には、選定したIT機器を堺市の全小学校に導入。すでに導入していたデジタルテレビとタブレットを組み合わせた授業「堺スタイル」を確立した。


 「堺スタイルでは、従来の紙の教科書と黒板を活用した授業に、うまくタブレットを融合させています。例えばノートPCではスムーズに行えなかった机間指導も、タブレットであれば教員のスキルに関係なく進められます。用途としては、タブレットから自作のPowerPoint教材をデジタルテレビに投映したり、教育委員会から配信しているデジタル教材を表示させたりしています。また、タブレットに搭載されているカメラ機能を活用して、児童のノートを撮影して、デジタルテレビに表示させることで、学級内での発表が簡単に行えるようになったようです。タブレットを導入する以前は、大きな画用紙に児童の意見を書き込んで発表していましたが、その書き込む時間が削減された分効率的に授業が進められるようになりました」と、浦氏は堺スタイルを実践した効果を語った。


 それでは、従来の課題だったIT機器の活用率についてはどうだろうか。「小学校の学級担任全員に、タブレット活用の調査を行いました。2014年1月から堺スタイルを実践していましたが、2月の調査では全体の44%、6月の調査では52%と約半数の授業でタブレットが活用されました。また、調査期間の2日間で95%の教員が1回はタブレットを取り入れた授業を実践しています。ノートPCを利用していた頃と比較すると、活用率は格段に高くなっていると言えます」(浦氏)


 堺スタイルによって従来のIT機器活用課題を解決し、スムーズな授業を実現した堺市。今後同市では、この堺スタイルを中学校にも拡大し、さらなる学習効果の向上を図っていく方針だ。

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